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多店舗展開企業ほど危ない?リース会計が炙り出す“属人化の罠”

新リース会計基準への対応と聞くと、「大企業のほうが大変そう」「複雑な会計処理は規模の大きな企業ほど負荷が高い」と思われがちです。
しかし実際に現場で話を聞くと、最も苦労しているのは多店舗展開企業であることが少なくありません。

なぜなら、店舗ごとに賃貸借契約や設備のリース契約が散在しており、本部の経理部門が全体像を把握できていないケースが多いからです。

「この店舗の契約書はどこにある?」「更新情報は誰が管理しているの?」
──
新基準対応の準備を始めた途端、社内にこうした混乱の声が飛び交い、対応に追われる企業も少なくありません。

リース会計基準の適用は、単なる会計ルール変更にとどまりません。
これまで表面化していなかった「契約管理の属人化」が、一気に浮き彫りになるのです。

なぜ多店舗展開企業が危ないのか

多店舗展開企業がリース会計対応でつまずきやすいのは、「契約の分散」「情報の属人化」「Excel限界問題」という三重苦を抱えているからです。

これらが複合的に作用することで、契約全体を正しく把握できず、制度対応に大きなハードルとなって立ちはだかります。

①契約の分散

多店舗展開企業では、店舗ごとに不動産の賃貸借契約や什器・設備のリース契約が発生します。
そのため、契約書は店舗単位でバラバラに管理されるのが一般的です。

たとえば、100店舗を展開していれば契約数はゆうに数百件、500店舗規模になれば数千件に及ぶことも珍しくありません。
しかも、同じ種類の契約であっても、契約条件が店舗ごとに異なるのが現実です。賃料やリース期間、更新条件、保証金の扱いなど、ひとつとして同じ内容の契約は存在しません。

このように契約が分散すると、

  • 本部が全体像を把握するのに時間がかかる
  • 契約ごとの差異が見落とされやすい
  • 店舗閉鎖や移転時に契約の洗い出しが漏れる

といった問題が顕在化しやすくなります。
分散管理は見えないリスクの温床なのです。

②情報の属人化

もう一つの大きな問題が属人化です。
契約の締結・更新・解約のタイミングや条件は、各店舗の担当者が管理しているケースが多く、情報が本部にまで届かないことがしばしばあります。

「この契約は誰が管理しているのか?」「いつ更新時期が来るのか?」といった基本情報ですら、本部では把握できていないことが少なくありません。

さらに厄介なのは、担当者が異動や退職をすると情報が途切れてしまう点です。
後任者に十分な引き継ぎが行われず、契約の存在自体が忘れ去られたり、解約や更新の判断が遅れてしまったりする例は多くあります。

属人化した契約管理は、「その人がいないとわからない」状況を常態化させるため、制度対応を本部主導で進めることを極端に難しくしてしまいます。

③Excel限界問題

「ならば本部でExcelに集約すれば良いのでは?」と考える企業も多いですが、ここにも大きな落とし穴があります。

確かにExcelは柔軟に項目を追加でき、初期コストもかからないため導入ハードルは低いのですが、

  • 契約の更新履歴を追う
  • 再契約や途中解約を反映する
  • 契約開始日・終了日をもとに日割計算をする

といった処理を数百〜数千件の契約に対して行うのは、ほぼ不可能です。
関数やマクロを駆使しても、ファイルは巨大化し、数式が壊れたり整合性が取れなくなったりするリスクが常に付きまといます。

現場では「誰が最後に更新したかわからない」「怖くてセルを触れない」といった声が上がり、ブラックボックス化したファイルに依存せざるを得なくなります。
この状態でリース会計対応を進めるのは、極めて不安定な土台の上に制度対応を乗せるようなものです。

実務で起きている“あるある”トラブル

際、多店舗展開企業では次のようなあるあるトラブルが頻発しています。

  • 店舗閉鎖に伴う解約手続きの一部が抜け落ち、使っていない設備のリース料を数か月払い続けていた。
    情報共有不足が原因で、不要なコストが発生していた。
  • 契約更新の通知が来ていたが担当者のメールに埋もれ、本部には共有されず自動更新されてしまった。
    店舗で勝手に契約更新されていたため、想定外のコスト増に。
  • 監査で「この契約の根拠資料は?」と問われたが、紙契約書が見つからず差し戻しを受けた。
    店舗のバックヤードに保管されていたが、担当者が休職中で所在不明に。監査対応が数週間ストップ。

こうしたトラブルの根底には「属人化」があります。
属人化が進むと、単に業務が煩雑になるだけでなく、金銭的な損失や監査対応の遅延といった経営リスクにも直結します。

問題の深刻化:新リース会計が属人化を炙り出す

2024年度から本格適用が進んでいる新リース会計基準では、リース負債・使用権資産をバランスシートに計上することが求められます。
つまり、「いま存在する全リース契約を正確かつ網羅的に把握すること」が大前提になるのです。

これまで「なんとなく店舗で管理」「経理は月次処理だけ関与」という体制でも回っていた企業でも、新基準対応にあたって契約情報を精査すると、漏れや誤りが次々と見つかるケースが後を絶ちません。

そして、一部でも漏れがあると会計数値全体が歪むため、監査で必ず指摘されます。
監査対応が長引けば、決算発表の遅延や、上場企業であれば株主・投資家への説明責任にも関わってきます。

属人化を放置したままでは、新リース会計基準に対応しきれません。
対応に追われる現場と経理部門の負担は増すばかりで、精神的な疲弊にもつながります。

解決策:契約管理の“見える化”と“標準化”が鍵

属人化を解消するためには、まず契約情報を全社で一元管理する仕組みを整えることが不可欠です。

  • 各店舗に点在する契約情報を本部に集約し、「誰でも」「いつでも」参照できる状態にする
  • 更新や再契約、解約といったライフサイクル情報も履歴として残し、後任でもスムーズに引き継げるようにする
  • 契約情報をもとにしたリース会計計算や仕訳作成も自動化し、属人的な手作業を減らす

このように業務を標準化・自動化していかなければ、契約数が多い多店舗展開企業では、到底リース会計に対応できません。

しかし、Excelや紙ベースでこれらを実現するのは限界があります。
管理の仕組みそのものを見直し、専用システムを導入して仕組みで属人化を解消することが、実務的かつ現実的な解決策です。

実際にPro-Signを導入し、契約書の見える化に取り組まれたお客様からも、以下のような声が寄せられています

―株式会社フレスタホールディングス様―
店舗数が増えて、会社規模も売上1,000億円を超えるようになってきて、個人で把握できる範囲を超えていました。「誰がいつ担当になるかわからない」中で、確実に次世代へ承継できる仕組みが必要だと痛感していました。

Pro-Sign導入後は、大量の契約書を紙のまま抱えていた状況から、PDFをアップロードすれば整理できる」という運用に変わり、AIによる取り込みが仕事の負担を大きく減らしてくれました。

Pro-Signによる契約管理・会計連携

Pro-Signは契約管理とリース会計対応を一体的に行えるクラウドシステムです。

多店舗開企業でも、店舗ごとに散在していた契約を本部で横断的に把握・管理できるようになります。

  • AIによる契約情報の抽出と物件毎の店舗情報管理
    紙やPDFでバラバラに保管されていた契約を、AIを用いてデータ化。さらに物件毎の契約書管理や情報管理も可能で、検索・共有も簡単に。
  • 過去の賃料改定や条件変更も含めた時系列の契約情報管理
    各店舗・拠点ごとに異なる契約書でも、時系列での条件変更や賃料改定を簡単に追跡できる仕組みを搭載。
  • 登録情報をもとにしたリース資産・負債の自動計算と、会計システムへのデータ連携
    会計基準に準拠した計算をシステムが自動で実行。複雑な計算や再契約も正確に処理が可能。

Pro-Signを導入すれば、各店舗の担当者任せになっていた契約管理から脱却し、本部で全社的な統制を効かせることができます。
結果として、新リース会計基準対応に必要なデータも正確かつスピーディーに収集でき、監査にも自信を持って臨めるようになります。

まとめ:属人化からの脱却が、新リース会計対応の第一歩

新リース会計基準は、属人的な契約管理の限界を白日の下に晒す制度です。
「契約書は店舗任せ」「本部は経理処理だけ」という従来のやり方では、新基準下では通用しなくなります。
特に多店舗展開企業では、契約件数の膨大さと関係者の多さゆえに、情報が分散・断絶しやすく、属人化を放置すれば以下のようなリスクが一気に顕在化します。

業務負荷の増大:締結日・更新日・解約条件などを追跡するだけで膨大な作業工数が発生。繁忙期には処理が追いつかなくなる。

金銭的損失:解約忘れや更新漏れによる二重払い、条件不利な再契約の見落としなど、目に見えるコスト損失が発生。

監査対応の遅延:契約書の所在不明や情報の齟齬が頻発すれば、監査人からの指摘対応に時間を奪われ、決算スケジュール全体が遅延。

このような負のスパイラルを断ち切るためには、「属人化からの脱却」こそが最優先課題です。
まずは契約情報を全社で共有できる形に見える化し、記録や運用ルールを標準化すること。
さらに、契約管理と会計処理を分断せず、一気通貫で対応できる仕組みを整えることが必要です。

そして、Pro-Signのような契約管理とリース会計を一体で支援するシステムを活用し、属人化からの脱却を図ることが、新リース会計基準対応を成功させる第一歩です。

早期に体制を整備し、システムの力を借りて持続可能な契約管理を実現することが、監査に耐え得る企業基盤を築く最短ルートです。

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