「DXは推進しているのに人手不足が解消されない」という企業にこそ知ってほしい!新たな枠組みで実現するアウトソーシングの形とは
目次[非表示]
- 1.アウトソースの3つの目的
- 1.1.人材の重点配置
- 1.2.量的な人材不足への対応
- 1.3.質的な人材不足への対応
- 2.アウトソースの最大のメリットとは
- 3.対象となる業務や契約期間の考え方とは
- 3.1.間接業務(ノンコア業務)
- 3.2.繁閑サイクルのある業務
- 3.3.イベント
- 3.4.高度な業務(コア業務)
- 3.5.高度な業務(コア業務ではないが専門的な領域)
- 4.目的、メリット、対象業務、アウトソース方式を組み合わせた活用事例
- 4.1.ストーリー1(慢性的な人員不足と人材の重点配置のため、店舗情報管理業務をBPOで対応したケース)
- 4.2.ストーリー2 (突然の担当者の退職により、店舗情報管理業務の継続が困難になったため、BPaaSを導入したケース)
- 4.3.ストーリー3 (多くの事業所に関する情報管理業務の繁忙期での遅滞を解消するためにSaaSからBPaaSに移行したケース)
- 5.最後に
近年、多くの企業が直面している深刻な問題が人手不足です。
人手不足や業務の効率化に向けて、DXを推進される企業もかなり増えてきました。
一方で、DXを推進しているものの、SaaS等の活用による業務効率化では解決できないくらいの人手不足を抱えている企業も増えてきています。
今回は、そうした課題に直面する多くの企業が取り入れている「アウトソーシング」について、アウトソースの対象となる業務の考え方や、その意義をお伝えするために、色々な要素に分解したうえで、アウトソースの活用事例を考えてみたいと思います。
※併せて読みたい
アウトソースの3つの目的
まず、アウトソースを目的の面から分解してみたいと思います。大きく次の3つに分けてみましょう。
・人材の重点配置
・量的な人材不足への対応
・質的な人材不足への対応
人材の重点配置
企業では、収益に直結する業務や、会社にとって重要な部門への人材配置を多くし、収益の増大につなげようとする戦略がとられます。
そして、その反面、サポート的な業務に従事する要員を少なくしようとすることもあります。
とは言うものの、サポート的な業務が不要な訳ではなく、外部のリソースを利用することによってその業務を行うことがアウトソース導入の目的となります。
量的な人材不足への対応
業種や企業規模によっては慢性的な人材不足の問題を抱えておられるところがあります。
それは、コア業務、サポート業務という区別ではなく、どの部署においても発生する可能性のあるものです。
また、近年では「働き方改革」のために、勤務時間の制限も厳しくなり、人材不足の要因となります。
この問題に対応するため、アウトソースが利用されます。
アウトソース以外にも、派遣社員の利用も解決策となり得ますが、「固定比率の上昇」という懸念点があります。
これについては、「アウトソースの最大のメリットとは」の章で詳しくお話しします。
質的な人材不足への対応
質的な人材不足は「ある業務を行うスキルや経験を持った社員が社内にいないか、または、不足している状況」を意味します。
その対象業務を細分化すると「高度なスキルが要求される業務」「会社として経験したことがない業務」「知識や経験を含むスキルの継承がうまく行われていない業務」となります。
特に問題は三つ目の「知識や経験を含むスキルの継承がうまく行われていない業務」で、アウトソースの目的の中でも大きな位置を占めるものです。
長年の経験値をもとに業務を進めてきたベテランが退職した場合や、マニュアル化されていない業務などは、業務が停止して初めて表面化する問題かもしれません。
なお、質的な人材不足は、コア業務にも、間接業務にも発生する問題ですが、その対応策として、アウトソースが導入されることがあります。
これら3つの目的は単一のものとして検討されることもあれば、企業の状況によっては、複合した目的と捉えられる場合もあります。
アウトソースの最大のメリットとは
アウトソースを行うことで、先ほど「目的」の章で挙げた3点をそのままメリットとして享受することが出来るようになりますし、ひとつの目的を達成することにより、複数のメリットが享受できるケースも多くあります。
例としては「マニュアル化されていない業務の担当者が急に退職し、その業務を行う人材が社内に無くなったが、アウトソースでまかなうことで質的人材不足の問題を解決した。
同時に、その業務のための要因の異動が不要になり、量的人材不足が解決されたうえ、コア業務への増員が可能になった」というようなケースが考えられます。
そしてアウトソースを行うことの最も大きな、特筆すべきメリットがもう一点あります。
それは、「アウトソースによるコストの変動費化」です。
「量的な人材不足への対応」策として、派遣社員の採用も解決策の一つであることをお伝えしましたが、「人件費は固定費であり、収益が減少しても発生するので経営を圧迫しやすい」とされます。
そして、一般的に「費用は変動化したほうが損益を管理しやすい」とも言われます。
その観点からすると、アウトソースにはコストの変動費化のメリットがあります。
ただし、長期に定額で契約したアウトソースは固定費化されますので、コストの変動費化のメリットを求める場合には、「業務を行った分だけ支払う」というような変動費化対応のアウトソース契約を検討する必要があります。
対象となる業務や契約期間の考え方とは
次は、「アウトソースの対象となる業務」と「アウトソースの契約期間」について分解してみます。
間接業務(ノンコア業務)
最も一般的にアウトソースの対象となるのが「ノンコア」と呼ばれることもある「間接業務」です。
経費精算伝票のチェックや店舗情報に関するデータ入力等、会社の売上や利益に直結するわけではありませんが、必要不可欠なものです。
一般的に行われるBPO(Business Process Outsourcing)と呼ばれる形態の場合、初回の契約期間を複数年とし、その後を1年間の自動契約とする方法がとられます。
これは、アウトソースを引き受ける側が、そのための準備や業務設計にかかる初期投資を初回の契約期間で回収する意図を含んでいます。
ただし、アウトソースを引き受ける側が既に持っているプロセスやシステムを使用する場合は、業務設計を省略することができ、準備期間も短くなります。
また、最近では、SaaSを利用してアウトソースを行う「BPaaS(Business Process as a Service)」という形態も現れて、発注側の負担がより少なくなっています。
さらに、最近は、そこにチケット制の契約形態が加わりました。
1年を通して継続的に業務が発生しないケースでは、業務発生毎にチケットを購入していく考え方で、コストの変動費化に適しています。
繁閑サイクルのある業務
業種や業態によっては季節要因が影響したり、定期的に繁忙期が発生したりするケースがあります。
言い換えると「業務の繁忙期とそうでない時期の業務量の差が大きいケース」ということになります。
例えば、年末年始や夏休みと通常月の忙しさが違う観光業や、人事異動の多い時期の人事部門・総務部門などが該当します。
このようなケースでは、繁忙期に合わせて人員を割り当てると「固定費率の高さ」が問題となりますので、アウトソースを利用することによる「変動費化」が行われますが、その期間としては「繁忙期のみ」とする場合と、「繁忙期とそうでない場合の区別をせずに、全期間をアウトソースする」という考え方があります。
イベント
前項とほぼ同様ですが、季節要因ではなく、何らかのイベントやプロジェクトで外部の力が必要になる場合があります。
そして、この場合は、量的な要員不足だけではなく、質的な要員不足、つまり、社内に対応できる人材がいない(少ない)こともアウトソースの対象となります。
とくに展示会や講演会のような大規模なイベントの場合は全体管理もアウトソースされることがあり、契約期間もイベント期間に応じたものとなります。
また、多店舗経営を行っておられる企業では、新規出店の際に多くの要員が必要となるケースがあります。
高度な業務(コア業務)
コア業務であってもアウトソースの対象となることがあります。
理由はやはり、質的/量的な人材不足が中心ですが、今まで会社として経験したことがない領域のため、アウトソースを利用するという場合もあります。
例えばDXの考えを導入するための業務分析等が考えられます。
契約期間については、業務が落ち着くまでと考えることができますが、具体的な期間は業務に応じて考えられるべきでしょう。
高度な業務(コア業務ではないが専門的な領域)
コア業務ではないものの、専門的な知識やスキルが必要な場合があります。
そんな場合にもアウトソースは活用されます。
よくある例として挙げられるのがプロジェクト管理です。
業務を進めるために必要な「業務改善」のようなプロジェクトだとしても、プロジェクト管理を生業としない会社では、自分たちだけで進めることは不可能ですので、アウトソースを利用することが一般的です。
ここでの契約期間は、やはり、業務に応じて検討する必要があります。
目的、メリット、対象業務、アウトソース方式を組み合わせた活用事例
ここまで、いろいろな角度からアウトソースについて考えてきました。
最後に、今まで考えてきたそれぞれの要素を組み合わせて、アウトソース活用事例を御紹介したいと思います。
全てのストーリーは、当社が多店舗経営をされている企業の皆様にお話をお伺いし、概略を簡単にまとめたものですが、細かな点は割愛しておりますので予めご了承下さい。
ストーリー1(慢性的な人員不足と人材の重点配置のため、店舗情報管理業務をBPOで対応したケース)
A社は多店舗展開をされている企業で、ここ数年は着実に店舗数を増やしておられます。
ただ、慢性的な人手不足になっており、ほとんどの部門で、社員の残業時間が増え続けている状況です。
経営陣の方々は、この状況を打開するために、間接部門の人員を店舗に配置換えすることを決め、間接部門には派遣社員の採用によって、業務が停滞しないように工夫されました。
店舗情報管理等の運営サポート業務については、X社にBPO形式でアウトソースすることを決めました。
アウトソースの準備のため、A社の担当者とその上司が何度かX社との業務分析会議に臨み、「運営サポート業務仕様書」が出来上がりました。
アウトソースすることで、人手不足は解消され、会社として満足はされていますが、BPO型でのアウトソースではいわゆる「丸投げ」状況になり、自社内に経験や知識、そして事業運営にまつわるデータ類が残らないことに課題を感じておられます。
ストーリー2 (突然の担当者の退職により、店舗情報管理業務の継続が困難になったため、BPaaSを導入したケース)
B社もA社と同様、多店舗経営を進めておられる企業です。
先月まで、店舗情報管理をひとりで担ってくれていたCさんが、突然退職すると言い出しました。
その上、有給休暇が残っているので、あとの期間は全て休暇を取ると言っています。
困ったのは、その上司Dさんです。
Cさんに店舗情報管理の全てを任していましたし、店舗に関するデータが必要な時は、Cさんに言えばすぐに出してくれていました。
ところが、Cさんがやっていた業務については、部分的にマニュアル化されてはいるものの、大部分はCさんの経験による暗黙知で進められていました。
このような状況のため、ほかの社員を割り当てることができず、派遣社員を雇うわけにもいきません。
また、BPOとして外部委託するにも業務の説明ができない状況なので、引き受けてくれるところはなさそうです。
そんな時、ある人から「BPaaS (Business Process as a Service)」というアウトソースの形態があるという情報をききました。
翌日、さっそく、BPaaSを提供しているP社から説明を聞いたところ「多店舗展開をされている多くの企業のノウハウを詰め込んだシステムをもとにしたアウトソース」だということでした。
また、そのアウトソースは「チケット制で、必要な時にだけ業務を依頼することができる」という非常にフレキシブルな方式だそうです。
その説明を聞いて、Dさんはすぐに導入のための上申書を作成し、上司の了解を得ました。
ひとつ、気がかりなのは、今までCさんがやっていたプロセスとは違うという点ですが、「これはBPR(業務の最適化)だ」と納得されています。
ストーリー3 (多くの事業所に関する情報管理業務の繁忙期での遅滞を解消するためにSaaSからBPaaSに移行したケース)
E社は多店舗展開の企業ではありませんが、営業担当者を多く抱えて、事業所も全国に支店/営業所/連絡所(社員の自宅)を配置する構成とされています。
そして、店舗情報管理と同様に、「事業所情報管理」は、「間接業務ではあるものの、事業運営を支えるための重要な業務」の位置づけとなっています。
ただ、困ったことがあります。
通常月はほとんど対象の業務量がないのに、1~3月と8~10月の人事異動前後は、他の部署からの応援が必要になるくらい忙しくなることです。
この時期は、本社と現場の両者が他の業務での繁忙期と重なっていることも悩ましい話です。
E社では、従来から、事業所情報管理のために総務部と事業所の現場でP社のSaaSを利用されていましたが、繁忙期対応とともに、経営委員会から指示が出ている「固定費削減」要請も併せて、P社のBPaaSに移行することを決めました。
P社のBPaaSはチケット制で、必要な時だけ使用する形態のため、コストの変動費化に優れていますし、従来利用していたSaaSを使用しているので、E社としても、データの利用方法にも慣れています。
次の経営委員会では「変動費化の実績報告」をされる予定です。
最後に
紹介させていただいた3つのストーリーは細かい部分で違いがあるかもしれませんが、もしかすると貴社にも部分的にあてはまるものがあるかもしれませんし、アウトソースの目的、メリット、期間を分析すれば、貴社に適したアウトソースが見つかるかもしれません。この記事がお役に立てますと幸いです。
尚、Pro-SignにおけるBPaaSの取り組みについては、是非当社担当者までお気軽にお問い合わせください。