人件費削減はどうあるべき?やる気低下と人手不足を招かない人件費削減とは
目次[非表示]
- 1.人件費削減に関する基本的知識
- 1.1.人件費の詳しい中身を知ろう
- 1.2.人件費削減は人件費以外の経費削減につながる
- 1.3.人件費比率の目安とは
- 2.人件費削減によるリスク
- 2.1.離職者の増加
- 2.2.慢性的な人手不足
- 2.3.法律違反になるリスク
- 2.4.企業イメージの低下
- 3.人件費削減のポイントは業務改善
- 4.人件費を下げる方法
- 4.1.業務の見直しで残業の削減
- 4.2.採用の抑止と社員教育の充実
- 4.3.アウトソーシングの導入
- 4.4.ITシステムの導入
- 5.まとめ
企業が負担する経費のなかでも、多くの割合を占める人件費。人件費削減にはさまざまなリスクを伴います。そのため、人件費を削減したいと思いつつも、なかなか踏み切れないことはありませんか?
今回は、特に店舗経営の分野における人件費削減への理解を深めるための説明と、どのような方法があるのかをご紹介します。
人件費削減に関する基本的知識
人件費を削減するためには、人件費の概要をしっかりと理解しておきましょう。ここでは、改めて人件費に関する基礎的知識をご紹介します。
人件費の詳しい中身を知ろう
人件費とは、店舗の運営における経費のなかでも人材に関わる費用全般のことです。
人件費の主な構成要素は給与全般・福利厚生費・法定福利費などです。
そのほか、退職金や採用費、育成費や旅費交通費などの、未来投資や間接的に人に関わる費用もさらに広い意味で人件費に含まれる場合があります。
人件費の範囲は広く、経費のなかでも大部分を占めます。そのため店舗ビジネスで重視しなければいけない項目だといえるでしょう。人件費は毎月の固定費としてかかりますが、ある程度はコントロールしやすい固定費です。そのため見直すことで負担を減らせる部分です。
人件費削減は人件費以外の経費削減につながる
人件費の削減に取り組むことは連鎖的に他の経費削減にもつながります。
削減可能な経費として挙げられるものは、日用品費・光熱費・研修費・交通費や資格所得のための費用などです。
例えば業務効率を上げて残業を減らすと、残業代だけでなく水道光熱費も減ったり、人材不足のときにアウトソーシングを利用すると、人材の採用や教育にかかる費用をカットできたりします。
人件費比率の目安とは
人件費率とは、店舗の売上高に占める人件費の割合のことです。原材料費などの仕入れ原価の影響を受けるため、人件費率の目安は業界によって適正な数値が違います。
例えば飲食店なら30%〜40%程度、サービス業なら40%〜60%程度、小売業なら10%〜30%とされています。
これらを基準にし、人件費をどの程度に抑えるとよいか検討するのがおすすめです。
人件費率は「人件費率(%)=人件費÷売上高×100」の計算式で算出できます。
人件費削減によるリスク
人件費削減は多くの店舗で悩まされている問題です。なぜなら人件費削減にはさまざまなリスクを伴う可能性があるためです。
ここでは人件費削減によって生じる可能性のある注意点を4つご紹介します。
離職者の増加
給与や賞与のカットやリストラは従業員のモチベーションを低下させ、従業員の離職を引き起こしかねません。場合によっては重要な役割である戦力を失う可能性もあります。特に売上に貢献するスタッフや業務に精通したベテランのスタッフの離職は避けなければいけません。離職者が増加して労働生産性が低下することは売上業務の低下にもつながります。単なる減給にしないために、削減方法は慎重に検討しましょう。
慢性的な人手不足
人件費削減によって離職率が増加すると、その分残ったスタッフの業務量が増えます。すると残った社員も給与と業務量の不釣り合いに疑問を抱き、退職を視野に入れてしまいます。慢性的な人手不足に陥ると、それがさらに離職者を増やすという悪循環ができあがってしまうでしょう。
法律違反になるリスク
『退職を勧誘する場合』
人件費削減の方法として、希望退職者の募集や退職推奨を行うケースがあります。この方法は法的リスクに十分に注意する必要があります。
退職の検討をお願いすることに違法性はありませんが、会社側は問題ないと捉えていた退職勧奨が、実は違法な退職強要に当たると事後に判断されるケースも少なくないため十分な注意が必要です。
『従業員の給与を下げる場合』
給与を下げることは人件費削減の効果が高い方法だといえます。
ただし、給与を下げることは労働条件の重大な不利益変更に該当します。そのため原則として労働者側の同意が求められ、さらにその際の同意は労働者の自由な意思に基づいたものと認められる必要があります(労働契約法第8条)。
給与を下げることは従業員にとっても容認し難いことです。労使間トラブルを回避するためにも、理解を得るための努力を尽くすことが必要です。
企業イメージの低下
ニュースやSNSなどで給与引き下げの情報が流れると、企業イメージダウンの危険性があります。人員削減や離職者の増加などの情報はブラック企業のイメージを消費者に与えます。多くの消費者から選ばれるためには、企業イメージの向上が重要です。他にも企業イメージの低下は今後の採用活動や取引先との関係にも影響を及ぼす可能性があります。マイナスイメージが定着しないよう、人件費削減は慎重に取り組みましょう。
人件費削減のポイントは業務改善
人件費を削減するために従業員の給与をカットすることは、もっとも簡単な方法です。ただしリスクが非常に高く、人件費削減の手順としては最後にすることをおすすめします。人件費削減の本質は、業務を効率化し、より生産性を上げることで人件費率を下げることです。効率化による業務改善は、遠回りに見えても人件費削減の重要なポイントです。
次章でも触れますが、ツールや研修・評価制度の導入で業務改善を行う前段階として、現状把握を推奨します。
人件費を下げるときは「より効率的に行える業務や作業ステップはないか」をはじめに洗い出しましょう。
人件費を下げる方法
前述の通り、安易に人件費削減に取り組むとさまざまなデメリットを生み出しかねません。人件費削減に取り組む際は、慎重に行うようにしましょう。ここでは、人件費削減におすすめの方法を4つご紹介します。
業務の見直しで残業の削減
時間外労働は人件費を圧迫する原因になりやすい要素のひとつです。
残業を減らすことは、光熱費削減や通常の時給よりも高額な残業代を支払う必要がなくなるなどの大きなメリットにつながります。しかしだからといって、ただ一概に残業禁止命令を出すことはよくありません。はじめは業務を見直し、本来必要ではない残業が発生していないかの確認を行いましょう。社員から改善案を募るのも業務見直しに効果的な一つの方法だといえます。
業務の効率化を図ることが、残業をなくすもっとも効果的な方法です。残業せずに現在の仕事量をこなすことが可能になれば、自ずと人件費は削れます。さらに、従業員からしても労働時間が減ることは、モチベーション向上やストレス低減などのメリットをもたらすと考えられます。そのため、残業を削減することは、人件費削減を進める上で懸念されるリスク回避にもつながる有能な方法といえるでしょう。
採用の抑止と社員教育の充実
離職率が高いと、新たな人材を一人確保するのに採用費用や教育費用がかかるうえ、教育を既存スタッフが行うため、作業効率が低下する負のスパイラルに陥ってしまいます。
業務過多に陥ると人材採用を検討する傾向が強くみられます。しかし、人件費削減を希望するのなら既存の社員のパフォーマンス向上を優先した方がよいでしょう。
今いる従業員の作業効率を上げ、現在の作業量をより少ない人員と少ない期間で行えれば、それは人員削減に成功しているといえます。職業環境の整備は遠回りのように思えますが、今後を見据えると人件費削減の効率的な方法といえるでしょう。
アウトソーシングの導入
人件費削減を進める上で検討したいのが、アウトソーシングの導入です。
アウトソーシングとは、例えば事務作業や清掃作業などの、すべての店舗に共通している直接的に利益が出ない作業を外部企業に一括委託するというものです。
アウトソーシングの利用には出費が伴います。ただし、既存の従業員の業務時間削減が可能になったり新たに人を雇う必要がなくなったりすることを考慮すると、外注した方が安価に抑えられるケースもあります。
アウトソーシングは繁忙期と閑散期で比率を変えるなどの調節が可能になるため、常に一定の費用がかかる人件費の見直しに貢献してくれるでしょう。
ITシステムの導入
ITシステムやツールを導入することで業務の軽減や、より少ない人数での営業が可能になるケースがあります。
例えばキャッシュレス決済を導入すると、レジ業務にかかる時間が少なくなり従業員への負担が減るだけでなく、レジ業務に割く時間も減らせます。また、現金のやり取りでお釣りを数えて渡す必要がなくなるため、釣り銭の間違いの減少も期待できるでしょう。
他にもITシステムには顧客管理システムや在庫管理システム、経理生産システムなどさまざまなものが存在しています。機械化できることは機械化することで業務を効率化できるだけでなく、人にしかできないところに力を注ぐことが可能です。
まとめ
今回は店舗運営において重要な課題である人件費削減について解説しました。すぐに実行に移せる給与カットや解雇による人件費削減は、従業員に負担が大きいだけでなく、今後の会社運営に影響を及ぼす可能性があるため、あまりおすすめできません。
人件費削減するためには業務効率化や業務の見直しなど、遠回りに思えるような方法が、実はもっとも効率的な方法であることが分かりました。
Pro-Signを導入すると店舗情報を一元管理し、これまでの管理業務を大幅に効率化してくれます。スムーズに導入できるよう、充実したサポート体制も整っていますのでぜひ参考にしてください。