事業運営に欠かせない支払調書とは?対象者や提出期限、種類などを解説
目次[非表示]
- 1.支払調書とは
- 2.支払調書の種類と対象者
- 2.1.報酬や契約金に対する支払調書
- 2.2.料金や経費に対する支払調書
- 2.3.賞金に対する支払調書
- 2.4.不動産の使用料等に対する支払調書
- 2.5.不動産等を譲受けた時の対価に対する支払調書
- 2.6.不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
- 3.支払調書の提出先と提出期限
- 4.法定調書に関する罰則
- 5.支払調書の作成や管理にはクラウドサービスがおすすめな理由
- 5.1.管理コストが低い
- 5.2.紛失を防止できる
- 5.3.情報共有がスピーディー
- 6.まとめ
近年は、数えきれないほどの業界が存在しており、事業内容によって必要な書類も異なります。
公的文書のひとつである支払調書は、さまざまな事業で提出が求められます。
本記事では、
「支払調書がどういう書類なのかを知りたい。」
「自分が該当者なのかを知るために、支払調書の提出範囲を教えてほしい。」
という方のために、支払調書の対象者や提出期限、種類などについて解説します。
支払調書とは
支払調書とは、特定の個人や法人に対する支払が発生した企業や個人事業主が、年間の支払いの詳細を税務署に報告するための書類です。
所得税法などの税金に関する法律に基づいて提出が義務付けられており、税務署が納税者の支払い状況を適切に把握し、確定申告などの申告が正しく行われているかを判断するために使用されてます。
支払調書には、報酬や料金、契約金、賞金などに関する情報が記載されており、支払いを受けた人の氏名や住所、支払金額、源泉徴収税額などの情報も必要です。
支払調書のテンプレートは、国税庁の公式ウェブサイトで公開されています。
興味がある方は、そちらもご覧ください。
支払調書の種類と対象者
支払調書は、特定の条件を満たす支払いがあった場合に作成し、税務署に提出しなければなりません。
支払調書にはいくつかの種類があり、取引の内容に応じて提出範囲や記載項目が異なります。
これから紹介する4つの主な支払調書を把握し、適切に使い分けられるようになってください。
報酬や契約金に対する支払調書
業務を外注したときの報酬や、契約を結ぶ際に必要な契約金などが発生した場合は、支払調書の提出が必要です。
支払調書の作成が求められる支払金額は、支払用途によって異なります。
一例として、プロボクサーやホステスなどへの報酬は、同一人に対する支払金額合計が年間50万円を超える場合は支払調書を提出しなければなりません。
プロ野球選手などに対する報酬や契約金については、同一人に対する年間の支払金額合計が5万円を超える場合、支払調書を提出します。
また、弁護士や税理士などに対しては、同一人に対する支払金額合計が年間5万円を超える場合に支払調書の提出が必要です。
さらに、社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬について、同一人に対する年間の支払金額合計が50万円を超える場合に支払調書の提出が求められます。
一般的に報酬や契約金に対する支払調書における金額には、消費税と地方消費税を含みます。
しかし、税額を記載する欄が明確に設けられている場合は、除外しても構いません。
報酬や料金、契約金及び賞金に対する支払調書は、法人への支払いや源泉徴収の対象外である場合でも、提出範囲に該当する方は、支払調書の提出が必要です。
料金や経費に対する支払調書
事業を運営するために必要な報酬や経費が発生した場合は、支払金額に応じて支払調書の提出が必要です。
一例として、外交員や集金人、電力量計の検針人へ支払う料金は、同一人に対する支払金額合計が年間50万円を超える場合に支払調書の提出が求められます。
また、ライターやデザイナーへの原稿料や画料、講演料などに対しては、同一人に対する支払金額合計が年間5万円を超える場合に支払調書を提出しなければなりません。
料金や経費に対する支払調書は報酬や契約金に対する支払調書同様、消費税と地方消費税を含みます。
そして、法人に対する支払いや源泉徴収の対象外の支払いである場合も、提出範囲に該当する方は、支払調書の提出が必要です。
賞金に対する支払調書
コンクールや広告宣伝のための賞金に対して支払が生じた場合は、同一人に対する支払金額合計が年間50万円を超える場合、支払調書の提出が必要です。
また、馬主への競馬の賞金について、同一人に対する1回の支払賞金額が年間75万円を超える場合も支払調書の提出が必要です。
賞金については、ノーベル賞の賞金などの非課税となる賞金もありますが、一般的には、所得税が課される可能性があります。
賞金に対する支払調書の支払金額は、所得税額も加算した金額を記載してください。
不動産の使用料等に対する支払調書
事務所や社宅、駐車場の賃料など不動産を使用する場合は、使用料が発生することがあります。
同一人における不動産の使用料などに対する支払額の合計が年間15万円を超える場合は、支払調書の提出が必要です。
不動産の使用料等に対する支払調書の支払金額は、報酬や料金、契約金及び賞金に対する支払調書と同様、消費税や地方消費税を含めて判断します。
不動産使用料については、賃借料だけでなく、地上権や地役権の設定に必要な権利金、敷金・礼金、更新料、借地権や借家権の名義変更料なども含まれますが、あっせん手数料などは次項で説明する不動産等を譲受けた時の対価に対する支払調書の対象です。
さらに、イベント会場の一時的な賃借料や陳列ケースの賃借料、広告目的の土地や建物の一部を利用した場合にも支払調書が必要です。
法人に対して不動産使用料を支払う場合は、賃借料以外の権利金や更新料などが対象になります。
そのため、家賃や賃借料のみを法人へ支払う場合は、支払調書は不要です。
不動産等を譲受けた時の対価に対する支払調書
不動産や不動産に付加されている賃貸料などの権利、総重量が20トン以上の船舶や航空機を譲受けた時の対価を支払う法人や不動産業者である個人は、支払調書を提出します。
不動産等を譲受けた時の対価に対する支払調書では、対価を受け取る側と支払う側双方の個人番号および法人番号が必要です。
不動産等を譲受けた時の対価に対する支払調書は、合計支払金額が年間100万円を超える場合に提出の対象となります。
支払調書提出の判断基準となる支払金額は、消費税や地方税なども加味してください。
建物の賃貸借における仲介や、代理契約を主な事業としている法人や不動産業者である個人は、支払調書の提出義務が免除されます。
しかし、当事者同士を会わせない仲介や代理契約ではなく、不動産などの譲渡の際に当事者同士をつなぎ合わせるために直接介入する「あっせん」をした際には、あっせん手数料を記載した支払調書を提出しなければなりません。
不動産等の譲受けについては、不動産等の売買や競売、公売、収用、現物出資などが支払調書提出の対象です。
さらに、不動産業を営む法人または個人に対して、建物移転費用、動産移転費用などの補償金が支払われる場合は、支払調書の摘要欄に補償金の種類と金額を記載してください。
不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書
不動産や地上権などの不動産に付加されている権利、20トン以上の船舶、航空機の売買や貸付けに対して仲介手数料を支払う法人や不動産業者である個人は、支払調書の提出義務があります。
なお、不動産等を譲受けた時の対価に対する支払調書と同様、取引の仲介や代理契約を主としている不動産業者は、支払調書の提出が不要です。
合計支払金額が税込みで年間15万円を超える場合は、不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書を提出しなければなりません。
不動産等を譲受けた時の対価に対する支払調書には、「あっせんした者」という欄が設けられています。
あっせんした者に、不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書に必要な情報を記載した場合は、不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書の提出は不要です。
支払調書の提出先と提出期限
支払調書の提出先は、種類にかかわらず支払事務を担当した事務所等の所在地を管轄している税務署です。
複数の物件や事務所を扱っている場合は、それぞれの地域にある税務署へ個別に支払調書を提出してください。
また、支払調書の提出期限は、原則として対象となる支払いが確定した日の翌年1月31日です。
支払期限も提出先同様、支払調書の種類に関わらず一般的に適用されています。
支払調書の提出は、税務署が正確に税務申告するために重要な手続きです。
提出期限や方法については、事前に確認し、適切に対応してください。
仮に支払調書に対して不明点がある場合は、税理士や法務専門家などに相談することをおすすめします。
法定調書に関する罰則
支払調書は、税務署へ提出が義務付けられている書類である「法定調書」のひとつです。
所得税法や相続税法、租税特別措置法、国外送金等に係る調書の提出等に関する法律などに基づいて提出されます。
支払調書は、支払った者が作成し、税務署に提出する義務があり、違反事項がある場合は、以下のような罰則が考えられます。
刑罰
法定調書遅延や未提出などの違反行為をした者には、最大1年間の懲役もしくは50万円以下の罰金に処されることがあります。
法人の代表者や従業者が違反行為をした場合、個人の行為者だけでなく法人も刑罰の対象です。
刑罰の具体的な内容や程度は、違反の性質や重大性によって異なりますが、意図的な未提出や虚偽の申告があった場合、税法違反としてより重い刑罰が科されます。
提出期限を遵守し、万が一遅れた場合は速やかに対応することが重要です。
延滞税
支払調書の作成が遅れたり、不備があったりしたことで、税金が定められた期限までに納付されない場合、延滞税が発生する可能性があります。
延滞税の割合は納期限の翌日からの経過期間に応じて異なり、特定の期間における割合は財務大臣が告示する基準割合に基づいて決定されます。
令和3年1月1日以降の延滞税は、納期限の翌日から2ヵ月を経過する日まで7.3%または「延滞税特例基準割合+1%」の低い割合、2ヵ月経過した日以降:は、14.6%と「延滞税特例基準割合+7.3%」の低い割合です。
なお、延滞税は本税にのみ課されるため、加算税などには適用されません。
重加算税
納税者が意図的に偽装したり、隠ぺいしたりした場合に課される税金を「重加算税」といいます。
法定調書の違反行為が納税に対する悪質行為のひとつであると判断された場合は、重加算税の対象となる可能性があります。
重加算税の税率は、過少申告加算税や不納付加算税に代わって課される場合は35%、無申告加算税に代わって課される場合は40%です。
重加算税は、税務上の違反行為に対する厳しい制裁で、法人にとっては社会的信用力の低下にもつながる可能性があります。
過少申告加算税
過少申告加算税は、納税者が本来納めるべき税額よりも少ない金額を申告した場合に課される加算税です。
支払調書の金額に誤りがあり、納める税額に誤差があると、過少申告加算税の対象となる可能性があります。
過少申告加算税の税率は、税金の10%ですが、当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超える場合は超過分に15%の税率が適用されます。
過少申告加算税は、税務署の調査を受ける前に自主的に修正申告した場合、過少申告加算税は課されません。
支払調書の作成や管理にはクラウドサービスがおすすめな理由
クラウドサービスとは、インターネットを介して提供されるさまざまなサービスの総称です。
インターネット経由でアクセスし、利用できるため、ハードウェアを所有したり、ソフトウェアを自身のデバイスにインストールしたりする必要がありません。
クラウドサービスは、幅広い場面で活用されていますが、支払調書の作成や管理にも利用できます。
ここからは、支払調書の作成や管理にクラウドサービスがおすすめな理由を3つ紹介します。
管理コストが低い
紙媒体の文書を保管するためには、保管スペースを確保しなければなりません。
事業年数が長くなり、扱う文書が増えると、保管に必要なラックや収納用品だけでなく、保管場所の増設も必要です。
また、セキュリティ面にも配慮しなければならないため、管理コストがかさみます。
支払調書の作成や管理にクラウドサービスを利用すると、物理的な文書の保管や管理に関わるコストを削減できます。
また、クラウド上でデータを管理することにより、必要な情報へのアクセスが容易になり、効率的なデータ管理が可能です。
そのため、クラウドサービスを利用すると、コストパフォーマンスの向上が見込めます。
紛失を防止できる
紙媒体の文書を多数保管すると、正確な保管場所を把握するのが困難です。
また、客先や電車内に置き忘れるなど、紛失や情報流出のリスクが高まります。
クラウドサービスでは、データがオンラインで保存・管理されるため、物理的な文書の紛失リスクが大幅に軽減されます。
また、セキュリティ対策が施されたクラウド環境は、データの安全性を高め、外部からの不正アクセスや災害時のデータ損失のリスクも低減可能です。
クラウドサービスを活用し、支払調書に記載されている重要なデータを安全かつ確実に保管できるため、紛失の心配を軽減してください。
情報共有がスピーディー
複数の事務所の事務手続きを本社で一括して担当している場合、各事務所と郵送でやり取りをすると、非常に時間がかかります。
クラウドサービスを利用すると、場所を問わずインターネット経由で支払調書にアクセスできるため、データ共有が瞬時に行えます。
また、チャットツールなどと連携すると、格納場所を共有したり、通話しながら同時編集したりできます。
さらに、翻訳ツールを併用すると、海外のクライアントと書類のやり取りや海外のデータの扱いも容易です。
複数の部署や地理的に離れた場所にいるチームメンバー間での情報共有が必要な場合は、クラウドサービスがおすすめです。
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まとめ
今回は、支払調書の対象者や提出期限、種類などについてまとめました。
支払調書は、企業や個人が行った特定の支払いの詳細を記録した重要な文書です。
事業を始めたばかりだったり、複数の事業を営んでいると、書類の不備が生じるかもしれません。
法定調書などにミスがあったり遅延が生じた場合は、適切に対処することで、罰則が重くなったり、問題の複雑化を防げます。
また、誤解や誤計算など悪意がない場合でも、関係機関へ経緯を適切に説明し、必要な書類を提出することが重要です。
支払調書など、事業運営に必要な書類を事前に確認し、健全な運営を実現しましょう。
さらに、業務を正確かつ効率的に行いたい方には、クラウドサービスがおすすめです。
クラウドサービスは、サービスによって料金や機能が異なります。
クラウドサービスを検討する方は、自身のニーズにマッチしたサービスを選んでください。