不動産の支払調書は税込?税抜?支払調書でよく見られるFAQを紹介
目次[非表示]
- 1.不動産の賃貸借に対するFAQ
- 1.1.不動産の賃貸料に敷金・礼金は含まれるのか?
- 1.2.不動産の賃貸料に共益費は含まれるのか?
- 1.3.水道光熱費は使用料等に含まれるのか?
- 1.4.借り上げ社宅の場合支払調書の提出は必要か?
- 1.5.海外に在住している人は支払調書の提出は必要か?
- 2.不動産の売買に対するFAQ
- 3.書き方について
- 4.支払調書について困ったときの相談先
- 4.1.国税庁
- 4.2.商工会議所
- 4.3.公認会計士や税理士
- 4.4.法務専門家
- 4.5.クラウドサービスのサポートチーム
- 5.まとめ
支払調書は、税抜金額か税込金額がどちらで記載するかご存じですか。
支払調書を作成する上で、疑問に思うことがあったという方も少なくないでしょう。
本記事では、不動産の支払調書を作成する上でよく見られる質問と解答を紹介します。
本稿が、支払調書に対する疑問の解決に繋がれば幸いです。
不動産の賃貸借に対するFAQ
不動産を使用する際に生じる事務所の賃貸料、権利金、一時的な土地使用料などの必要な支払いに対して、支払調書の提出が求められます。
ここからは、不動産の賃貸借においてよく見られる支払調書の質問を紹介します。
不動産の賃貸料に敷金・礼金は含まれるのか?
敷金・礼金は、返還の有無によって支払調書の使用料等に含めるかが決まります。
敷金や礼金の中で返還されない部分、または時間の経過と共に返還されないことが決まる部分については、権利金と同様に扱われるため、支払調書の使用料等に加算してください。
返還されない敷金や礼金は、返還されないことが確定した時点で、加算します。
一方で、敷金や礼金は、本来賃借人の債務を担保するものですが、一部または全部が賃貸人に帰属することが決まっている場合もあります。
返還される部分は、その部分は不動産所得の収入として計上されます。
一例として、法人が個人に対して建物の賃借に伴い支払った50,000円の敷金のうち、20,000円は、返還されないと契約書に記載されている場合、20,000円は支払調書の使用料等に記載しなければなりません。
不動産の賃貸料に共益費は含まれるのか?
共益費は、支払調書における賃貸料の対象です。
共益費は、賃貸物件の共有部分の維持管理や清掃、ゴミ収集などのサービスに関連する費用で、家賃とは別に計算され、賃借人に請求されます。
契約内容によっては、家賃と共益費を別々に支払う必要があります。
しかし、一部の物件では家賃に共益費が含まれていることもあります。
支払調書には、共益費という項目が設けられていません。
そのため、共益費を含める必要がないという意見もあります。
しかし、共益費を全額家主が受け取っている場合、共益費が家賃と見なされる場合もあるため、賃貸料に含めてください。
契約書には、家賃と共益費の支払いに関する詳細が記載されているため、支払調書を作成する際は、契約書類を確認することが重要です。
水道光熱費は使用料等に含まれるのか?
賃貸借契約書で水道代や電気代が毎月定額で支払われることになっている場合、水道光熱費は不動産の使用料等に含まれます。
一例として、賃貸借契約書において、毎月の賃料が100,000円、水道代が月額5,000円、ガス代が月額4,000円、電気代が月額3,000円と定められている場合、水道光熱費を含めた家賃(100,000円+5,000円+4,000円+3,000円=112,000円)は、実際の使用量に関わらず定額で支払われます。
名目上は、水道光熱費が別の費用とされていても、実質的には賃料の一部とみなされるため、使用料等へ計上します。
借り上げ社宅の場合支払調書の提出は必要か?
借り上げ社宅とは、法人が賃貸契約した物件を従業員に貸し出す制度です。
従業員にとっては経済的な負担が少なく、節税対策や人材確保に役立つなどの理由から、福利厚生の一環として企業によって採用されています。
借り上げ社宅は、企業が従業員のために個人の家主から賃借し、賃料と共益費を支払うことがあります。
企業が賃料や共益費を支払っている場合は、家主が支払調書に賃料と共益費の合計額を記載しなければなりません。
一例として、企業がアパート一室につき賃料として月額80,000円、共益費として月額5,000円を支払っている場合、合計額(80,000+5,000=85,000)を支払調書に記載します。
社宅として企業が賃貸物件を所有・管理している場合は、企業が支払調書を作成します。
海外に在住している人は支払調書の提出は必要か?
日本国内の不動産等を所有している家主が海外に在住している場合、支払調書の提出義務の有無については、支払いが国内源泉所得に該当するかどうかによって決まります。
日本の不動産から得た家賃収入などは、日本の税法に基づいて源泉徴収の対象となることがあり、適切な手続きを経て税金が徴収されます。
非居住者や外国法人が、国内源泉所得に該当する場合、支払調書を提出しなければなりません。
一方で、日本国外に所在する不動産の貸付による賃料は、国外源泉所得に該当し、国内源泉所得には該当しません。
そのため、国外に支店や駐在員事務所を構えている日本法人が、日本国外で賃借する不動産の賃料を非居住者等に支払う場合、賃料は国内源泉所得に該当しないため、支払調書の提出義務はありません。
一例として、東京と千代田区に本社を構える企業は、愛知県名古屋市の支店で発生した支払いに対しては支払調書の提出が必要ですが、アメリカのニューヨークに駐在員事務所がある場合は、駐在員事務所の支払調書はニューヨークの規定に従います。
不動産の売買に対するFAQ
不動産の取引、特に売買に対する支払金額が年間で15万円を超える場合や、不動産の譲渡である人物に対して年間合計で100万円以上の支払いがあった場合、支払調書の提出が必要です。
ここからは、不動産においてよく見られる支払調書の質問を紹介します。
不動産の支払金額等に消費税は含まれるのか?
支払調書は、原則として消費税込みの金額で記載してください。
ただし、報酬等の額と消費税の額が明確に区分されている場合には、消費税抜きで記載することも可能です。
税抜金額で記載する場合は、消費税の金額を法定調書の「摘要」欄に記載してください。
不動産の支払金額等の金額に対する規定は、所得税法第225条第1項第3号、第6号、第8号、第9号、第10号及び同法第227条の適用を受ける対価や使用料、報酬などが支払われる場合において、該当金額が消費税法第28条に規定する消費税の課税標準にも該当する場合に適用されます。
金額の書き方は、取引相手によって異なるため、事前に確認しましょう。
競売において「支払を受ける者」に該当するのは誰か?
競売は、債務者が債務を返済できない場合に、債務者が所有する不動産を法的手続きによって強制的に売却し、その売却代金で債権者の債権を満たす制度です。
支払調書は、支払いを受ける法人や個人の名前や住所、拠点を記載しますが、競売の場合は、競売によって不動産を購入した人から賃料を受け取る権利を持つ法人や個人を支払いを受ける者とします。
競売では、不動産が最終的に新しい所有者に移転されるため、新しい所有者が「支払を受ける者」となります。
そのため、新しい所有者は不動産の使用料等の支払調書を作成し、提出しなければなりません。
前払費用や未払い費用はどうする?
不動産事業を営む上で、不動産の評価や検査するために必要な調査費用などの前払費用や、購入後に支払う残金や仲介手数料などの「未払い費用」が発生することがあります。
前払費用や未払い費用を支払調書の金額に加算するかの判断基準は、年内に支払いが確定したかどうかです。
一例として、家賃の賃貸契約が2023年4月から始まり、家賃が前月末日までに支払われることになっている場合、支払調書の支払金額欄には、2023年4月分から2024年の1月分までの計10ヵ月分の家賃を記載します。
契約内容によって記載する金額が異なるため、事前に確認してください。
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書き方について
事業内容や状況によって支払調書の記入内容は変わります。
ここからは、支払調書の書き方においてよく見られる質問を紹介します。
家主が亡くなった場合の個人番号はどうする?
個人番号は、日本に住民登録しているすべての人に対して割り当てられ、12桁の数字で構成されている番号です。
税務申告や社会保険の手続き、災害時の支援など、さまざまな公的手続きにおいて個人番号が利用されており、支払調書にも個人番号を記入する欄があります。
家主が亡くなった場合は、亡くなった家主の個人番号の記載は不要です。
相続税申告書においても、納税者の抵抗感を考慮して被相続人の個人番号の記載が不要とされており、支払調書でも適用されています。
なお、家主の死亡により支払調書に個人番号を記載しない場合は、摘要欄に死亡した旨を記載することで、税務署は家主が亡くなったことを理解でき、書類の不備と受け取らなくなります。
また、弁護士や税理士、司法書士などの受給者本人に対して支払調書を交付する場合も、番号法上の特定個人情報の提供制限を受けるため、個人番号の記載は不要です。
受給者本人へ支払調書を交付することは、税法上の義務ではなく、あくまで商慣習に基づくものであるため、個人番号だけでなく角印も不要です。
支払調書の提出は郵送でもいいのか?
支払調書は郵送で提出することは可能です。
給与所得の源泉徴収票など、法定調書合計表や支払調書など、法定調書は、所轄の税務署に書面で郵送して提出できます。
また、支払調書は、日本の国税庁が運営する国税に関するオンラインサービスである「e-Tax」を利用しての電子申告も可能です。
近年では、e-Taxの利用状況が向上しており、法人や税理士による利用が増加しています。
支払調書の提出方法にお悩みの方には、e-Taxがおすすめです。
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支払調書について困ったときの相談先
支払調書の悩みを書籍やウェブサイト、SNSを使って調べたけど解決できなかったことはありませんか。
ここからは、支払調書について不明点や心配なことがある時の相談先を紹介します。
国税庁
国税庁は日本の税に関する総合的な機関で、支払調書を取り扱っている省庁です。
支払調書に関する規定や手続きについて正確な情報と指導を提供しています。
国税庁のウェブサイトでは、支払調書に関連するさまざまな情報が提供されており、必要に応じて直接問い合わせも可能です。
また、国税庁の地方局や税務署を通じても、具体的な疑問に対する相談や支援を受けられます。
税務に関する複雑な問題に直面した際には、国税庁を頼りにすると良いでしょう。
商工会議所
商工会議所は、地域の経済発展と商工業者の利益を促進するための組織です。
会員に対してビジネス関連の情報提供や経営相談、研修会やセミナーの開催などさまざまなサービスを提供しています。
商工会議所では、中小企業や個人事業主が直面する税務の問題について、専門的な助言やサポートを受けることが可能です。
地域の商工業者の意見を集約し、政府や地方自治体に対して政策を提言する役割も担っているため、的確なアドバイスが期待できます。
公認会計士や税理士
公認会計士や税理士は、税法に精通しているため、支払調書の作成や提出要件、計算方法などに関する正確かつ専門的なアドバイスが可能です。
また、税務申告に関連する複雑な問題を解決するための知識と経験を有しており、具体的なケースに応じた具体的な指導を受けられます。
費用面で懸念がある方は、無料相談を開催している公認会計士や税理士へ相談してください。
法務専門家
支払調書の相談相手として、税務に関する専門知識を持つ法務専門家を選ぶこともおすすめです。
法務専門家は、支払調書の作成や適切な記載方法、法的要件についての詳細な指導を提供できます。
特定の分野に対して広範な知識を有しているため、個々の状況に応じた具体的なアドバイスが可能です。
そのため、支払調書の正確な処理に不安を感じた際には、法務専門家に相談することで、問題の解決や適切な手続きができます。
クラウドサービスのサポートチーム
支払調書の作成や管理においてクラウドサービスを活用している場合は、クラウドサービスのサポートチームに相談してみてください。
多くのクラウドサービスでは、専門的なサポートチームがおり、電話やメールチャットボットなどを用いてソフトウェアの使用方法や特定の機能に関する疑問を解決してくれます。
また、支払調書の作成に関連する技術的な問題や操作上の不明点についても解決策を提供してくれるため、迅速かつ効果的なサポートが期待できます。
まとめ
今回は、不動産の支払調書を作成する上でよく見られる質問と解答を紹介しました。
支払調書などの法定調書は、不備などがあると修正しなければなりませんし、最悪の場合、虚偽申告として罰則の対象となる可能性があります。
適切な知識を身に付け、ミスを防ぎましょう。