店舗の賃貸借契約を電子捺印で締結する時代は到来するか



前記事「不動産業界で一気に加速するDXとは」で触れた通り、2021年5月19日に公布されたデジタル改革関連法により、宅地建物取引業法の一部が改正されました。これにより、2022年5月以降、賃貸借契約/売買契約等の不動産契約の完全オンライン化が可能となりました。

これを受け不動産業界ではデジタルトランスフォーメーションに向けた動きが加速していますが、現在Pro-Signにも多数登録されている書面で締結された賃貸借契約書が電子契約で締結される時代がやってくるのか、を今回は考えてみたいと思います。


目次[非表示]

  1. 1.電子契約が不可の契約が存在する
  2. 2.電子契約には契約関係者の全ての同意が必要


そもそも契約の成立とは、民法第522条に規定されている通り、「一方が契約の内容を提示し、もう一方が承諾した際に成立し、法令に特別の定めがある場合を除き、書面等の作成の必要はないもの」とされています。つまり口頭でも契約は成立するということです。ただ口頭だけだと後々になって言った言わないの問題も多いことから、書面による契約締結を行うことで、訴訟時の証拠能力を持たせています。電子契約は電子署名を付すことで、書面による契約締結と同様の証拠能力を保持しているとみなされる為、これだけ利用が広がってきているものと考えられます。


では何故、賃貸借契約については今まで電子契約が行われてこなかったのか。前述の民法第522条に記載されている「法令に特別の定めがある場合を除き」という部分がその理由です。賃貸借契約は、法令によって「書面を取り交わし、且つ宅地建物取引士の押印をすること」を義務付けていましたが、それが今回の改正で不要となり、2022年5月以降の完全オンライン対応が可能となったことで、これから利用が増えていくものと考えられています。


ただ、店舗の運営に必要な土地や建物の賃貸借契約においても今後電子契約が広がっていくかという点においては、各所から懸念の声も挙がっています。その大きな理由は下記2点です。


電子契約が不可の契約が存在する

デジタル改革関連法により、ほとんど全ての契約書において電子契約が可能となりましたが、一部対象外のものも存在しており、その中で店舗運営に影響するものは事業用定期借地契約です。前記事「不動産賃貸借における賃貸借契約と公正証書の違いとは?」で触れた通り、店舗の運営に必要な事業用の建物を建てる目的で土地を借りる契約のことを事業用定期借地契約と言いますが、

この契約については、借地借家法第23 条によって、「公正証書の作成」が義務付けられており、それ以外の形(電子契約も含め)で結んだ契約は無効となります。そういった観点から、店舗運営に必要な契約を電子契約で行うことに中々踏み切れないという声が挙がっています。


電子契約には契約関係者の全ての同意が必要

不動産賃貸借契約においては、所有者、借主、仲介会社等の関係者が存在しますが、その全てが電子契約に同意し、対応出来る必要があります。特に所有者は高齢の方が多く、PCやインターネット等の環境が整っていないというケースが多々あります。PCが無くても、スマートフォンがあれば大丈夫なのではと思われるかもしれませんが、国交省の実施した社会実験の結果によると、スマートフォンで電子書面を見る場合、「全体的に見やすく、確認に支障がなかった」という回答は50%で、「一部見にくい箇所があった」、「全体的に見にくく、確認に支障があった」との回答も50%を占めています。その為、PCやタブレット等で確認を行うことが望ましいのですが、高齢者においてはそういった環境が整っていることは珍しく、結局書面での契約締結を望まれることが多くなり、中々電子契約が浸透するイメージが持てないという声が挙がっています。


上記のような背景もあり、店舗の賃貸借契約に関して電子契約がすぐに広がりを見せるのは難しいと思われます。とはいえ、居住用の賃貸借契約であったり、大手不動産会社の運営するショッピングセンターやオフィス等の賃貸借契約については、徐々に電子契約も増えてきておりますし、公正証書の作成に係る手続きのオンライン化計画も閣議決定されておりますので、時間はかかるとしても、いずれ必ず広く浸透していくであろうということは間違いないと思われます。



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