新リース会計基準の対応に現場の協力が得られない!という時に読んでほしい見逃してはならない重要なポイント



新リース会計基準は単に会計プロセスに影響をもたらすだけではありません。社内の様々な組織や業務機能にも影響を与えます。特に多店舗展開企業の不動産賃貸借契約と新リース会計基準の関係は複雑になりがちで、それにつれて、会社内の多くのプロセスにも影響を与えることになります。
このコラムでは「新リース会計基準が業務に与える影響」と「影響への対応方法」を組織の役割分担の側面から考察します。
なお、当コラムでは、多店舗展開のように、不動産賃貸借契約を多く利用されているケースを想定しています。




目次[非表示]

  1. 1.リース契約、不動産賃貸借契約の対象物件の管理
    1. 1.1.管理という言葉が含む業務(新リース会計基準対応前)
    2. 1.2.管理という言葉が含む業務(新リース会計基準対応以降)
  2. 2.契約の各フェーズで新たに発生する業務
  3. 3.新たに月次で発生する業務
  4. 4.新リース会計基準への組織的対応
  5. 5.最後に


リース契約、不動産賃貸借契約の対象物件の管理


リース契約や不動産賃貸借契約等を締結して店舗運営をされている企業では、それらの店舗情報をどのように管理されていますでしょうか。
唐突な質問から始めてしまいましたが、この質問に対して「そもそも、管理って何のこと?」という質問が返ってくるような気もします。
 
そこで、まず、リース契約(これ以降「リース契約」という表記は、一般的な動産リース、不動産賃貸借契約、リース部分を含むサービス契約を全て含みます)の管理やその対象物件の管理部署の特定の前に、ここで言う「管理」の意味を明確にしておきたいと思います。
なお、このコラムでは、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(いわゆる「新リース会計基準」)から受ける影響に焦点をあててお話いたしますが、新リース会計基準への対応前と対応以降では、「管理」という言葉が含む業務内容に違いがありますので、まずは、そこから話を始めます。


管理という言葉が含む業務(新リース会計基準対応前)

2027年4月から始まる「新リース会計基準」への対応という考え方が始まるまでは、次のような業務が中心なのではないでしょうか。

契約書の保管
実体としての契約書の保管です。
紙としての契約書の保管はもちろんのこと、閲覧の利便性のためにPDFとして保管されている場合も有ると思います。

契約書データ管理
実体としての契約書の管理だけではなく、契約そのものの追加の場合、その更新、契約期間の満了時、あるいは契約変更時には、契約書に含まれる様々な内容をデータベースに登録する必要があります。
契約データのデータベース化をまだ実施しておられない会社もあると思いますが、マスターデータとしての契約データベースの利用は、多くのメリットがありますし、DXの基本ともなります。

支払処理
支払依頼や請求があった場合に、実際の支払・仕訳を行う業務です。

付属設備/備品管理、メンテナンス管理
店舗では設備が必須要素ですし、事務所においても備品は無くてはならないものです。
また、設備のメンテナンス履歴も重要です。

(多店舗展開の場合)店舗戦略立案、(事務所、営業拠点が多い場合)事務所設置方針
店舗戦略立案は、経営戦略に直結するものとなります。
また、事務所の設置方針検討については、近年の働き方改革とも関連して人事政策のひとつのポイントとなります。


管理という言葉が含む業務(新リース会計基準対応以降)

新リース会計基準対応以降は、それ以外に、次のような新たな業務が発生します。

リース会計対象判断

  • リース契約がリース会計対象となるかどうかの判断が必要となります。
  • この判断で「リースを含む契約である」と識別された場合は、以下の業務が必要になります。

オンバランス処理

  • リース対象物件を使用権資産として、リースの対価をリース負債として貸借対照表に計上し、それを月次処理で取り崩していく処理となります。

リース資産管理(減価償却を含む)

  • 対象物件をリース契約としてだけではなく、リース資産として管理する必要があります。
  • そこには、減価償却費の管理や、支払利息計算の管理も含まれます

財務指標管理(内部統制、ステークホルダー管理)

  • オンバランス処理により、財務指標の中でも使用権資産額の増加とリース負債額の増加がクローズアップされる可能性があります。
  • そのため、管理会計を含む内部統制や財務指標を重視するステークホルダー管理も新たな業務となります。


契約の各フェーズで新たに発生する業務




では、次に、前の章で洗い出した業務を、視点を変えて、事業を進めて行く中で発生する「イベント」の側面から見ていくことにします。

リース契約には「契約締結」「契約更新」「契約変更」等のフェーズがあります。
​​​​​​​これらは「イベント」と捉えることができます。
 
これらの契約に関連するイベントにおいて、従来は、契約書面(紙)の保管や契約データの登録/更新が各フェーズで必要な業務でした。
しかし、新リース会計基準処理では、従来の業務に加えて、リース資産管理とオンバランス処理という新たな業務が発生します。

従来、財務経理部門では、支払依頼が回ってきた段階で初めて対応を開始していました。
しかしながら、今後は、契約の「締結」や「更新」、「条件変更」等に関する「イベントが発生した時点」での関与が求められるようになります。

また、その関与は財務経理部門だけではなく、店舗開発や総務部門、経営企画部門にも求められます。

最も重要なのは、各部門の担当者がそれらのイベント発生時にリアルタイムで内容を確認/把握出来ることです。

例えば、新規契約締結時には、その契約がオンバランス処理の対象かどうかの判断(リースの識別)を行い、対象になるのであればリース負債額計算の基準となるリース期間を決定するという業務が発生します。

また、月次でオンバランス処理を行う上での初期処理として、使用権資産額算出のための現在価値計算とその登録、リース負債額の登録、支払リース料の元本分と利息分への分解計算も必要です。

契約変更時や更新時には、それらの数値の見直しが必須業務となりますし、場合によっては、新たな使用権資産、リース負債の登録が求められますので、各部門の担当者が「漏れなく」「リアルタイム」で確認出来るようにしておかなければ、会社の重要な数値に誤謬を生んでしまうことになりかねないということを認識しておかなければなりません。


新たに月次で発生する業務

次に、イベントとして「月次処理」を取り上げます。
 
従来、リース契約に関しての月次処理は、リース料の支払いと、それに付随する経費計上のみで済ませることができていました。
このプロセスは、いわゆるオフバランス処理です。

ところが、新リース会計処理が始まると、前述のように、リース資産管理とそれに基づくオンバランス処理が必要になります。

簡単な仕訳で経費を計上するだけであった従来と比べて、減価償却費を計算し、それにより使用権資産を償却するという手間がかかりますし、リース料もひとつの経費ではなく、本体分と支払利息分に分割して計上するという面倒な処理が必要になります。

新リース会計基準では、不動産賃貸借契約がリース会計の対象となりますので、多店舗展開を行われている企業では、大きな業務負荷になると思われます。


新リース会計基準への組織的対応

前章までは業務に焦点をあてましたが、この章では、もうひとつのテーマである「そのための組織的対応」を考えてみたいと思います。
 
月次処理であれ、契約の各フェーズであれ、それぞれのイベントで発生する「業務間の情報伝達」「担当組織間の情報伝達」が重要です。
例えば、月次処理で必要な業務をそれぞれ違う部門で行っていた場合、「支払依頼が来たので、支払処理を行いました」だけで済まないことはイメージしていただけると思います。
 
今回の新リース会計基準に向けた対応は、色々なところで作業工数が増えるため、財務経理部門だけで対応するのは非常に難しく、関連部門や、特に契約を管理している部門の協力がないと、十分な対応が出来ないと考えられます。
 
特に問題となる部分は、財務経理部門以外で契約を管理している部門の業務負荷です。

財務経理部門は、会計基準に準拠した処理を滞りなく行うことが目的の部門であり、前向きな対応が期待出来る一方で、他の部門においては、各部門独自の目的をもって活動している為、新リース会計基準に向けた対応は単純に「負荷の増加」と捉えられてしまう可能性をはらんでいます。
 
そのため、「新リース会計の対応の為だけ」に新たな作業をお願いすることになりますと、それらの部門との温度差が生じてしまい、結果的に上手く対応しきれない可能性も有ります。
そうした危険性を避ける為にも、会社全体で契約管理体制を含めた抜本的な改善を図ることで、各部門それぞれにメリットがあり、負荷も軽減出来るという方法を模索することが非常に重要なポイントです。


最後に

新リース会計基準への対応には、業務間の連携が遅滞なく行われることが重要ですし、それが継続されることも、また、重要なポイントです。
どこかで情報の流れがとまってしまっては、新リース会計基準への対応が進まないだけではなく、戦略の展開にも影響を与えてしまいます。

前述の通り、契約管理体制を含めた抜本的な改善を図る場合には、弊社の展開する多店舗展開企業向けに特化したPro-Signがお役に立てるかと思いますので、是非資料ダウンロードやお問合せから御確認ください。




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