
【2026年最新】新リース会計基準と税務の違いとは?令和7年度税制改正後の別表調整・税効果会計を解説
新リース会計基準では、借手側において、原則としてすべてのリースについて使用権資産とリース負債を計上する考え方が導入されます。
一方で、税務上の取扱いは、会計基準と完全に同じになるわけではありません。令和7年度税制改正では、新リース会計基準の公表を受けてリース税制の見直しが行われましたが、オペレーティング・リース取引については、引き続き賃貸借取引として支払賃借料を損金算入する取扱いが整理されています。
そのため、会計上は使用権資産・リース負債を計上し、減価償却費や支払利息を認識する一方で、税務上は賃借料として損金算入する、というズレが生じる可能性があります。
この記事では、新リース会計基準と税務の違い、令和7年度税制改正後の実務上のポイント、別表調整や税効果会計への影響、さらに毎年の税制改正に追従するための確認ポイントを整理します。
まず結論:会計はオンバランス、税務は従来処理が残る
新リース会計基準への対応で最も重要なのは、「会計処理」と「税務処理」を分けて考えることです。
会計上は、従来のオペレーティング・リースに該当する契約であっても、原則として使用権資産とリース負債を計上することになります。一方、法人税法上は、オペレーティング・リース取引について、引き続き賃貸借取引として支払賃借料を損金算入する取扱いが維持されています。
項目 | 会計上の取扱い | 税務上の取扱い |
|---|---|---|
オペレーティング・リース | 原則として使用権資産・リース負債を計上 | 引き続き賃貸借取引として処理 |
使用権資産 | 貸借対照表に資産計上 | オペレーティング・リースでは原則として税務上の資産計上対象ではない |
リース負債 | 貸借対照表に負債計上 | 税務上はリース負債としては認識しない |
費用処理 | 減価償却費・支払利息などを認識 | 債務の確定した支払賃借料を損金算入 |
つまり、新リース会計基準への対応では、会計上のオンバランス処理だけでなく、税務上の取扱いとの差異をどう管理するかが実務上の大きなテーマになります。
令和7年度税制改正で整理されたリース税制のポイント
令和7年度税制改正では、新リース会計基準の公表を受けて、リース税制について複数の見直しが行われました。
借手側の実務で特に重要なのは、オペレーティング・リース取引について、引き続き賃貸借取引として支払賃借料を損金算入する取扱いが明確化された点です。
改正・整理項目 | 内容 | 実務上の意味 |
|---|---|---|
オペレーティング・リースの損金算入 | 契約に基づき支払うこととされている金額のうち、各事業年度において債務の確定した部分を損金算入 | 会計上オンバランスしても、税務上は従来の賃借料処理が残る |
所有権移転外リース取引の償却 | 令和9年4月1日以後締結の契約について、リース資産の取得価額から残価保証額を控除せず、リース期間経過時点に1円まで償却可能 | ファイナンス・リースに該当する取引では、税務上の償却計算への影響を確認する必要がある |
リース譲渡の延払基準の特例 | 法人税法上のリース譲渡に係る収益・費用の帰属事業年度の特例が廃止 | 主に貸手側の収益・費用認識への影響を確認する必要がある |
借手企業にとっては、まず「自社の契約が税務上のリース取引に該当するのか、オペレーティング・リースに該当するのか」を整理し、そのうえで会計処理との差異を管理することが重要です。
会計と税務で何がズレるのか
新リース会計基準では、借手はリース開始日に使用権資産とリース負債を計上し、その後、使用権資産については減価償却費を、リース負債については支払利息を認識します。
一方、税務上オペレーティング・リース取引に該当する場合には、各事業年度において債務の確定した支払賃借料を損金算入します。
場面 | 会計上 | 税務上 |
|---|---|---|
契約開始時 | 使用権資産・リース負債を計上 | オペレーティング・リースでは資産・負債を認識しない |
毎期の費用 | 減価償却費と支払利息を計上 | 支払賃借料を損金算入 |
契約変更時 | リース負債の再測定や使用権資産の調整が必要になる場合がある | 契約変更後の支払賃借料、債務確定額を確認 |
申告時 | 会計上の費用をもとに税引前利益を算定 | 会計と税務の差異について別表調整を検討 |
特に、リース負債に係る利息費用は、リース期間の前半に大きくなりやすいため、会計上の費用配分と税務上の賃借料処理との間に期間差異が生じる可能性があります。
別表調整が実務上の大きな論点になる
会計と税務で処理が異なる場合、法人税申告では別表調整が必要になることがあります。
たとえば、不動産賃貸借契約について、会計上は使用権資産・リース負債を計上し、毎期の費用を減価償却費と支払利息に分けて認識する一方、税務上は支払賃借料を損金算入する場合、会計上の費用額と税務上の損金額が一致しないことがあります。
別表調整のイメージ
会計上の費用:減価償却費 + 支払利息
税務上の損金:支払賃借料
この差額について、申告調整や税効果会計の検討が必要になる場合があります。
ここで重要なのは、契約ごとの会計処理だけでなく、税務上どの金額を支払賃借料として扱うかを継続的に把握できる状態にしておくことです。
契約更新、賃料改定、中途解約、フリーレント、共益費や維持管理費の内訳変更などが発生すると、会計上のリース負債や使用権資産だけでなく、税務上の損金算入額にも影響する可能性があります。
税効果会計への影響も確認が必要
会計上の費用認識と税務上の損金算入のタイミングが異なる場合、一時差異が発生し、税効果会計の検討が必要になることがあります。
たとえば、会計上は使用権資産の減価償却費とリース負債に係る支払利息を認識し、税務上は支払賃借料を損金算入する場合、各期の費用配分が一致しない可能性があります。
一時差異が発生するかどうか、繰延税金資産または繰延税金負債を認識するかどうかは、各社の会計方針や監査法人等との協議に基づいて判断する必要があります。
そのため、会計処理と税務処理を別々に計算するだけでなく、契約単位で差異を追跡できる管理体制が重要になります。
多店舗展開企業で影響が大きくなる理由
不動産賃貸借契約を多数保有する多店舗展開企業では、新リース会計基準と税務のズレが大きな実務負担になる可能性があります。
店舗ごとに契約期間、更新条件、解約条項、賃料改定、共益費、原状回復義務、フリーレントの有無などが異なるため、会計上のリース期間やリース料と、税務上の損金算入額を個別に管理する必要があるためです。
発生するイベント | 会計上の確認 | 税務上の確認 |
|---|---|---|
契約更新 | リース期間、延長オプション、リース負債の再測定 | 更新後の支払賃借料、債務確定額 |
賃料改定 | リース料変更、リース負債の見直し | 改定後の賃借料の損金算入額 |
中途解約 | 使用権資産・リース負債の消滅、損益処理 | 解約違約金、原状回復費用、未払賃料の取扱い |
共益費・維持管理費の変更 | リース部分と非リース部分の区分 | 支払賃借料、付随費用、固定資産・繰延資産に該当する費用の整理 |
店舗数が多い企業ほど、契約変更や賃料改定のたびに、会計と税務の両方で情報を更新する必要があります。これをExcelや部門ごとの個別管理だけで行うと、差異の追跡や監査対応に大きな負荷がかかります。
毎年の税制改正に追従するために確認すべきこと
リース税制は、新リース会計基準の適用開始後も、年度ごとの税制改正や通達改正、国税庁のタックスアンサー、実務上のQ&A等によって確認すべき内容が追加・整理される可能性があります。
そのため、記事や社内マニュアルを一度作成して終わりにするのではなく、毎年の税制改正に合わせて、会計・税務・契約管理の観点から更新する運用が重要です。
確認時期の目安 | 確認する情報 | 確認ポイント |
|---|---|---|
毎年12月頃 | 税制改正大綱 | リース税制、法人税、消費税、減価償却、賃貸借取引に関する改正予定があるか |
翌年3月〜4月頃 | 改正法令・政令・省令 | 大綱段階の内容が実際にどのような法令として成立したか |
4月以降 | 国税庁の改正概要・タックスアンサー | 申告実務で参照すべき取扱いが更新されているか |
6月〜7月頃 | 法人税基本通達等の改正 | リース判定、リース期間、リースを構成する部分と構成しない部分の区分、損金算入時期などに変更がないか |
決算前 | 監査法人・税理士との確認 | 別表調整、税効果会計、契約変更時の処理方針に問題がないか |
特に、新リース会計基準の適用初年度だけでなく、適用後の契約更新・賃料改定・新規出店・退店のたびに、会計と税務の情報を更新する必要があります。税制改正の確認と契約情報のメンテナンスは、継続的な業務として設計しておくことが重要です。
税制改正に追従するために管理しておきたい契約情報
毎年の税制改正に対応するためには、契約書そのものを保管するだけでは不十分です。会計処理と税務処理の両方に使える形で、契約情報を構造化して管理する必要があります。
● 管理しておきたい主な情報
- 契約開始日・契約終了日
- 会計上のリース期間
- 税務上のリース取引・オペレーティング・リースの判定
- 延長オプション・解約オプションの有無
- 固定賃料・変動賃料・共益費・維持管理費の内訳
- フリーレント、賃料改定、段階賃料の有無
- リースを構成する部分と構成しない部分の区分
- 使用権資産・リース負債の計算に使う金額
- 税務上の支払賃借料・債務確定額
- 別表調整・税効果会計に必要な差異情報
これらの情報を契約単位で管理できていれば、税制改正や通達改正があった場合にも、どの契約に影響があるかを確認しやすくなります。
新リース会計対応は、会計・税務・契約管理をつなげる必要がある
新リース会計基準への対応は、会計処理だけの問題ではありません。会計上の使用権資産・リース負債、税務上の支払賃借料、法人税申告上の別表調整、税効果会計、契約更新や賃料改定の管理がつながることで、はじめて実務として運用できます。
特に多店舗展開企業では、不動産賃貸借契約の件数が多く、店舗ごとに契約条件が異なります。契約書、会計データ、税務データが分断されていると、毎年の税制改正や契約変更に追従することが難しくなります。
そのため、新リース会計対応では、契約情報を一元管理し、会計・税務の両方で利用できるデータとして整備しておくことが重要です。
まとめ
新リース会計基準では、借手のリースについて原則として使用権資産とリース負債を計上します。一方、令和7年度税制改正後も、オペレーティング・リース取引については、税務上、引き続き賃貸借取引として支払賃借料を損金算入する取扱いが整理されています。
その結果、会計上は減価償却費と支払利息、税務上は支払賃借料という形で、費用の認識方法やタイミングが異なる可能性があります。実務上は、別表調整や税効果会計の検討が重要になります。
また、リース税制は今後も年度ごとの税制改正や通達改正、国税庁の公表情報により確認すべき内容が更新される可能性があります。毎年の税制改正に追従するためには、契約情報を会計・税務の両面で使えるデータとして管理することが欠かせません。
新リース会計対応を、単なる会計基準変更への対応ではなく、契約管理、税務申告、経営管理をつなげる取り組みとして進めることが重要です。
Pro-Signの新リース会計対応について
Pro-Signでは、不動産賃貸借契約の契約期間、更新・解約条件、賃料、共益費、敷金・保証金、契約変更履歴などを一元管理し、新リース会計基準対応に必要な契約情報の整理を支援します。
ご利用にあたって
最終的な会計処理、税務処理、別表調整、税効果会計の判断は、各社の会計方針、契約内容、税理士・公認会計士・監査法人等との協議に基づき行う必要があります。
参考:企業会計基準委員会「企業会計基準第34号『リースに関する会計基準』」、国税庁「賃貸借取引(オペレーティング・リース取引)についての取扱いの概要」、国税庁「法人税基本通達等の一部改正について」


