秘密保持契約書(NDA)ってなに?基礎知識からひな形まで解説!




目次[非表示]

  1. 1.秘密保持契約書(NDA)とは
    1. 1.1.秘密保持契約書(NDA)を締結する目的
    2. 1.2.秘密情報流出、漏洩時のリスク
  2. 2.秘密保持契約書(NDA)の締結
    1. 2.1.秘密保持契約書(NDA)締結のタイミング
    2. 2.2.秘密保持契約書(NDA)締結の流れ
  3. 3.秘密保持契約書(NDA)のひな型
    1. 3.1.秘密保持契約書(NDA)の見本
    2. 3.2.秘密保持契約書(NDA)の見本についての解説
  4. 4.まとめ


サービスやプロダクトの提供を行うにあたって、取引相手に自社の情報を渡したり、取引相手から重要な情報を受け取る必要のある場合が存在します。しかし、取引上で必要なために情報を受け渡ししているだけで、それを第三者に公開されたくない場合の方が多いものです。企業の業務上の機密事項などが競合他社に漏れた場合には、大きな問題に発展するでしょう。個人情報である場合も同様です。

このような事業で取り扱われる重要性の高い情報において、情報の流出や第三者へ公開されてしまうような事態を避けるために取り交わす契約書が秘密保持契約書です。NDAとも呼ばれるこの契約書は、取引でやり取りした情報を第三者へ公開しないことを約束するもので、企業にとっては情報漏洩によるトラブルのリスクを削減する役割を果たします。

本記事では、秘密保持契約書(NDA)について、概要と締結に関する流れについてご紹介いたします。また、秘密保持契約書作成に無料で誰でも利用できるひな形と記載項目についての説明も行っていますので、秘密保持契約書作成の参考にしていただければ幸いです。


秘密保持契約書(NDA)とは

秘密保持契約書とは、製品やサービスなどの取引を行う際に、自社が取引相手に対して開示する秘密情報を第三者に公開しないよう締結する契約です。対象となる情報の内容と情報を利用してよい範囲を明確に定める必要があります。Non-Disclosure Agreementの先頭3文字をとってNDAとも呼ばれます。

また、企業が従業員を雇う際にも締結することがあります。誰しも身内は疑いたくないものですが、業務において知り得た機密情報や他の従業員の個人情報を守るために、内部不正を防ぐ取り決めや退職後の情報の取り扱いについて定めることが、従業員との秘密保持契約を締結する目的となります。


秘密保持契約書(NDA)を締結する目的

秘密保持契約書を締結する目的は、事業運営上の機密や個人情報を守ることです。

企業にとって情報は「人、モノ、金」に次ぐ4つ目の資産といわれており、非常に重要性の高い価値あるリソースです。業務上のノウハウは利益を生み出すもとであり、顧客のリストや詳細情報はビジネスを支える存在といえます。さらに特許などの知的財産は情報そのものに価値のある例です。また、ビジネスで生まれたデータを収集して、ビッグデータとして活用することはDXの実現においても重要な実現手段の一つに数えられています。

個人情報については、その重要性はすでに浸透している通りです。ビジネスのために預かった個人情報が流出した場合、企業の信頼性を大きく傷つけることになります。さらには、損害賠償問題に発展するケースもあり、ニュースで目にしたことのある人も多いことでしょう。

PマークやISMSなど情報の取り扱いに関する認証を取得している企業の場合は、情報の取り扱いかたそのものが適合性基準の一環となるため、秘密保持契約書の締結はより重要な意味を持ちます。

不正競争防止法によって企業の秘密情報(営業秘密)が、個人情報保護法によって個人情報が、守るべき重要なものとして法的保護の対象とされています。これは情報の重要性の高さを示しており、逆説的に言えば保護する法律が必要なほど流出や漏洩が問題視されているともいえるのです。

秘密情報流出、漏洩時のリスク

秘密情報が流出、漏洩してしまった場合には、どの様な事態となってしまうのでしょうか。

簡単な事例をあげれば、販売会社における仕入価格などが秘密情報にあたります。競合他社に仕入価格が知られてしまった場合には、企業は競争力を失い、大きな問題となることが予測できます。

情報漏洩時の損害賠償については、特定非営利活動法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)による調査データが存在します。「インシデント損害額調査レポート 2021年版」によると、業務上で管理している個人情報漏洩における損害賠償額は1名あたり28,308円とされています。情報漏洩の規模によっては、数百万~数億円規模まで膨らむこともあり得ます。

さらに企業の機密情報の漏洩の場合は、一概にはいえないものの、情報の用途と価値、重要度によってはより大きな損害賠償額となりえます。過去には数百億円規模の訴訟が提起された事例もあり、そのリスクは大きいと考えなければなりません。

参考:特定非営利活動法人 日本ネットワークセキュリティ協会「インシデント損害額調査レポート 2021年版」


秘密保持契約書(NDA)の締結

秘密保持契約書の締結を実際に行う際のタイミングと流れについて説明します。

秘密保持契約書(NDA)締結のタイミング

 秘密保持契約書の締結は主に、下記のタイミングで行います。

・共同での事業開始時(業務委託含む)

・従業員を雇用する際

取引を行う契約の際に結ぶのが定番です。すぐにでも情報が流出する可能性を阻止するために、一刻も早く契約書を締結し、情報が漏れないよう細心の注意を図ります。後追いで締結することも可能ですが、締結されるまでに取引が進められていれば、それまでの間での情報流出を防げません。

従業員と秘密保持契約書を締結する場合には、雇用のタイミングで秘密保持契約書の締結を行います。ただし、在職中の従業員への契約が必要となった場合には、その限りではありません。従業員向けの場合には、在職中、退職後の両方を対象とする記載とします。

秘密保持契約書(NDA)締結の流れ

 秘密保持契約書を締結する際のおおよその流れは下記のとおりです。

1.秘密保持契約書を締結したい側が契約書を作成します。対象の秘密情報を明確化して記載するためです。後述の雛形を利用することで、作業工数をかけずに契約書を作成できます。

2.締結をしたい側から、取引先に対して契約と契約書の確認を依頼します。契約書を送付して、内容を確認してもらい、内容のすり合わせや修正を行いましょう。最終的には印刷した書面を両者1部ずつ持つ形となりますが、すり合わせの段階では電子データでのやり取りでかまいません。

3.契約書の記載内容が確定したら、二部印刷して取引先に送付します。返送を前提とするため、返信用の封筒も同封しましょう。

4.契約書を受領した側は、契約書に署名・捺印を行い、取引相手に返送します。

5.署名、捺印が行われた契約書を受領したら、契約書を作成した側も署名、捺印を行い、契約書二部のうち一部を返送します。お互いに一部ずつを保有して、契約書の締結が完了します。

なお、3、4、5に関しては、近年のビジネスシーンでは電子サインの仕組みを利用する場合も増えており、その場合にはオンラインで作業が完了します。最終的な紙の書面も発行せず

電子データのURLを共有する形となります。

契約書の作成年月日は調印日とすることが通例ですが、過去に遡って契約書の有効な期間にあわせて定める場合もあります。
契約書締結の流れについては、従業員との秘密保持契約書を締結する場合においても同様です。


秘密保持契約書(NDA)のひな型

秘密保持契約書を作成する際の見本として、経済産業省が公開している資料「秘密情報の保護ハンドブック」を利用することが可能です。秘密保持契約書を締結する相手ごとに異なる契約書の雛形が掲載されているため、シーンにあわせてご利用ください。

本項では事業者間で秘密保持契約書を締結する場合の見本を紹介します。

秘密保持契約書(NDA)の見本

業務提携時の秘密保持契約書例

出典:経済産業省「秘密情報の保護ハンドブック」((*)の注記も含む。)


秘密保持契約書

_____株式会社(以下「甲」という。)と_____株式会社(以下「乙」という。)とは、_____について検討するにあたり(以下「本取引」という。)、甲又は乙が相手方に開示する秘密情報の取扱いについて、以下のとおりの秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。


第1条(秘密情報)(*2)(*3)

1.本契約における「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に開示し、かつ開示の際に秘密である旨を明示した技術上又は営業上の情報、本契約の存在及び内容その他一切の情報をいう。ただし、開示を受けた当事者が書面によってその根拠を立証できる場合に限り、以下の情報は秘密情報の対象外とするものとする。

①開示を受けたときに既に保有していた情報

②開示を受けた後、秘密保持義務を負うことなく第三者から正当に入手した情報

③開示を受けた後、相手方から開示を受けた情報に関係なく独自に取得し、又は創出した情報

④開示を受けたときに既に公知であった情報

⑤開示を受けた後、自己の責めに帰し得ない事由により公知となった情報

2.前項本文の情報のうち、甲が乙に秘密である旨を指定して開示する情報は別紙1を、また乙が甲に秘密である旨を指定して開示する情報は別紙2を含むものとする。なお、別紙1及び別紙2は甲と乙とが協力し、常に最新の状態を保つべく適切に更新するものとする。(*4)

3.甲又は乙が口頭により相手方から開示を受けた情報については、改めて相手方から当該事項について記載した書面の交付を受けた場合に限り、相手方に対し本規程に定める義務を負うものとする。(*5)

4.口頭、映像その他その性質上秘密である旨の表示が困難な形態又は媒体により開示、提供された情報については、開示者が相手方に対し、秘密である旨を開示時に伝達し、かつ、当該開示後○日以内に当該秘密情報を記載した書面を秘密である旨の表示をして交付することにより、秘密情報とみなされるものとする。(*5)


第2条(秘密情報等の取扱い)

1.甲又は乙は、相手方から開示を受けた秘密情報及び秘密情報を含む記録媒体若しくは物件(複写物及び複製物を含む。以下「秘密情報等」という。)の取扱いについて、次の各号に定める事項を遵守するものとする。

①情報取扱管理者を定め、相手方から開示された秘密情報等を、善良なる管理者としての注意義務をもって厳重に保管、管理する。

②秘密情報等は、本取引の目的以外には使用しないものとする。

③秘密情報等を複製する場合には、本取引の目的の範囲内に限って行うものとし、その複製物は、原本と同等の保管、管理をする。また、複製物を作成した場合には、複製の時期、複製された記録媒体又は物件の名称を別紙のとおり記録し、相手方の求めに応じて、当該記録を開示する。(*6)

④漏えい、紛失、盗難、盗用等の事態が発生し、又はそのおそれがあることを知った場合は、直ちにその旨を相手方に書面をもって通知する。

⑤秘密情報の管理について、取扱責任者を定め、書面をもって取扱責任者の氏名及び連絡先を相手方に通知する。(*7)

2.甲又は乙は、次項に定める場合を除き、秘密情報等を第三者に開示する場合には、書面により相手方の事前承諾を得なければならない。この場合、甲又は乙は、当該第三者との間で本契約書と同等の義務を負わせ、これを遵守させる義務を負うものとする。

3.甲又は乙は、法令に基づき秘密情報等の開示が義務づけられた場合には、事前に相手方に通知し、開示につき可能な限り相手方の指示に従うものとする。


第3条(返還義務等)

1.本契約に基づき相手方から開示を受けた秘密情報を含む記録媒体、物件及びその複製物(以下「記録媒体等」という。)は、不要となった場合又は相手方の請求がある場合には、直ちに相手方に返還するものとする。

2.前項に定める場合において、秘密情報が自己の記録媒体等に含まれているときは、当該秘密情報を消去するとともに、消去した旨(自己の記録媒体等に秘密情報が含まれていないときは、その旨)を相手方に書面にて報告するものとする。


第4条(損害賠償等)

甲若しくは乙、甲若しくは乙の従業員若しくは元従業員又は第二条第二項の第三者が相手方の秘密情報等を開示するなど本契約の条項に違反した場合には、甲又は乙は、相手方が必要と認める措置を直ちに講ずるとともに、相手方に生じた損害を賠償しなければならない。


第5条(有効期限)

本契約の有効期限は、本契約の締結日から起算し、満○年間とする。期間満了後の○ヵ月前までに甲又は乙のいずれからも相手方に対する書面の通知がなければ、本契約は同一条件でさらに○年間継続するものとし、以後も同様とする。


第6条(協議事項)

本契約に定めのない事項について又は本契約に疑義が生じた場合は、協議の上解決する。


第7条(管轄)

本契約に関する紛争については○○地方(簡易)裁判所を第一審の専属管轄裁判所とする。本契約締結の証として、本書を二通作成し、両者署名又は記名捺印の上、各自一通を保有する。


令和__年__月__日

(甲)________

(乙)________

注記:

(*1)業務提携・業務委託等の事前検討・協議に際して秘密保持契約書を締結する場合のほか、その後の業務提携・業務委託に係る契約の中で上記の例のような秘密保持条項を盛り込む場合も考えられます。なお、本例のように、業務提携・業務委託に係る契約とは別に、事前の協議段階での秘密保持契約を締結する場合には、業務提携・業務委託に係る契約書において、別途、秘密保持契約書を締結している旨を明示し、それぞれが何に関連する秘密保持契約であるのか等、契約関係を明確にすることが有効です。

(*2)この他、業務提携・業務委託等に向けた検討の事実それ自体が秘密情報に含まれると定めることもあります。その場合、業務提携・業務委託の検討の事実については、第5条に定める有効期限は他の秘密情報と比べて相対的に短く、自動更新条項は置かずに6か月~2年程度となることが一般的です。また、業務提携・業務委託を合意した時点での当該業務提携・業務委託の事実についての公表は、事前に双方同意のもとで行う旨を併せて規定することも考えられます。

(*3)秘密保持の対象とする情報の定義と呼称(例えば、「企業秘密」、「秘密情報」など。)については、(参考資料2)各種契約書等の参考例191当該開示の趣旨や取引慣行等に応じて様々なものが考えられます。なお、上記では「一切の情報」と書いていますが、秘密保持の対象となる情報の特定ができる場合には、別紙でその内容をリスト化するなど(☞*4(第2項)を参照)、できる限り具体的に行うことが重要です。

(*4)秘密情報の対象をより明確化するためには、秘密保持の対象情報を別紙でリスト化し、随時更新することも考えられ、その場合にはこのような規定を追加することも考えられます。

(*5)口頭や映像等で情報が開示される場合に備え、このような規定を追加することも考えられます。

(*6)複製を行うことについては、事前の書面による承諾を求めると、受領者において情報の円滑な活用が阻害される可能性が懸念されます。そこで、また~以下のような規定を設け、いつどのような複製物を作成したかをリスト化し、返還・消去の対象を明確化することも考えられます。

(*7)取扱責任者等、秘密情報の授受を行う窓口を決定し、当該窓口経由でのみ秘密情報の開示を行う場合も考えられます。

秘密保持契約書(NDA)の見本についての解説

各条での記載について解説します。

第1条では、秘密保持契約書で対象とする秘密情報についての定義を行っています。どの様な情報に対して秘密保持契約の対象にするかを明確にする必要があります。書面だけでなく口頭や映像、電子的なデータも対象とする場合には、こちらで記載を行っておきましょう。

第2条では、秘密情報の取り扱い方について定めています。第三者への公開を禁止するとともに、厳重な管理を行うことを定めています。問題が発生した時の対応についても定めておくと安心です。

第3条では、秘密情報が不要となった際の返却や廃棄について定めています。取引が終わった後には、最終的に相手側から秘密情報を引き上げておきたい場合がほとんどです。このため、秘密保持契約書の時点で最終的な情報の返却や破棄まで定めておくとスムーズです。返却ではコピーを残さないこと、破棄の場合には破棄方法まで指定しておくとよいでしょう。

第4条では、秘密保持契約に反した場合の罰則および対応について定めています。契約書上で定めていることにより、罰則が法的効力を帯びます。

第5条では、秘密保持契約の有効期間と期間終了後の扱いについて記載しています。契約書の締結相手との関係が長期的に続く場合には、特に契約の破棄を申し出なければ延長するように定めておくことで、契約書の期限切れで不用意に秘密が漏洩することを防ぐことが可能です。

第6条では、本契約書に記載のない内容や契約書に記載された内容に疑問が生じた場合には、契約者間で再度すり合わせを行うことを定めています。このような記載を行うことで、秘密保持契約書に現時点では記載が無くとも、今後発生しうる新たな問題に対してフォローをすることが可能です。

第7条では、管轄の裁判所について記載しています。契約書を用意した側の住所を管轄する裁判所を記載することが一般的です。契約書に記載された内容の履行に問題が発生した場合に、記載した裁判所にて第一審を行うこととなります。また、書面は二部作成し、契約の当事者がお互いに一通ずつ保有することもここで定めています。

上記の第1条から第7条までが必須というわけではありません。よくある例として捉えてください。また、本項で扱っている見本に記載のない内容も必要に応じて適宜追加を行ってください。


まとめ

秘密保持契約書(NDA)とは、事業者間での取引を始める際や企業が従業員と雇用契約を結ぶ際に、以降の取引や業務において知り得た契約相手の秘密情報を外部に流出させないことを約束する契約書です。企業の機密情報や個人情報などを取り扱う場合には、情報の流出によるトラブルを避けるために締結しておきたい契約の一つです。

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