契約書のスキャン代行とは?そのメリットと手順を解説
電子帳簿保存法の改正に伴い、契約書の電子データ化や社内のペーパーレス化が進んでいます。
今回は、契約書の電子データ化するメリットやスキャン代行業者への依頼方法について解説します。膨大な量の契約書をデータとしてまとめたいと考えている方は、ぜひ最後までご覧ください。
出典:国税庁「電子帳簿保存法の内容が改正されました」
目次[非表示]
- 1.保存した紙の契約書は電子化しても問題ない?
- 2.電子帳簿保存法とは
- 3.契約書を電子化するメリット
- 3.1.保管・活用のためのコスト削減
- 3.2.一元管理で共有・閲覧が容易に
- 3.3.検索性の向上
- 3.4.文書紛失の防止
- 4.契約書を電子化する際の注意点
- 4.1.原本を廃棄できない場合がある
- 4.2.スキャン作業に手間がかかる
- 4.3.データの管理・保全が必要
- 5.スキャン保存の基準とは
- 5.1.スキャン保存を許可された書類
- 5.2.スキャン形式の基準
- 6.スキャン代行業者とは
- 7.スキャン代行業者に依頼する際の手順
- 8.スキャン代行業者を選ぶ際のポイント
- 8.1.電子化データにどこまでの機能性を求めるか明確にする
- 8.2.セキュリティ性の高さ
- 8.3.原本の保管・処理方法
- 9.まとめ
保存した紙の契約書は電子化しても問題ない?
原則問題ありません。政府は「働き方改革」の一環として「リモートワーク環境の整備」を挙げており、文書の電子化に前向きな姿勢を見せています。
法制度としても、1998年には国税関係帳簿書類の電子データによる保存を認めた「電子帳簿保存法」、2004年には商法や税法で紙書類での保存を義務付けられていた書類について電子化保存を認める「e-文書法」が施行されています。
これらの法律では、電子化される前の紙書類についてもスキャン、写真撮影などによる画像データでの保存を認めています。ただし画像による保存には、一定のルールがあるため、電子化の前に正しい知識が必要です。
電子帳簿保存法とは
前述したように、電子帳簿保存法とは国税関係帳簿書類の電子データによる保存に関する法律です。当初は電子化による保存にさまざまな制約や手続きが必要でしたが、数回の改正を経て、電子化へのハードルは徐々に下げられています。
特に2022年1月の改正では規制緩和が大幅に進み、以下のように大きな変化がありました。
● 税務署長の事前承認制度が廃止
● スキャナのタイムスタンプを付与する期限が延長
● スキャン後の定期的な検査が不要になり、原本の早期廃棄が可能に
● 検索要件が、日付・金額・取引先のみで可能に
● 特定の国税に関する帳簿を優良な電子帳簿として認定する制度が整備される
例えば、帳簿の申告漏れがあった場合、優良と認定された電子帳簿に記載されていると、過少申告加算税が5%軽減される措置が与えられます。
さらに大きな変化として、電子取引における領収書は紙での保存が認められなくなりました。経過措置として2023年の間は猶予期間として紙による保存が認められていますが、2024年1月からは電子データによる保存しか認められません。
この法律は、電子帳簿を採用していない企業に対しても適用されます。したがって文書の電子化に対応していない企業は、早急な取り組みが求められます。
契約書を電子化するメリット
契約書を電子化するメリットとは、どのようなものでしょうか。
代表的なメリットを、以下でご紹介します。
保管・活用のためのコスト削減
契約書を全て紙で保存すると、会社によっては膨大なスペースと契約書用の紙が必要です。また、契約書は内容によって契約後に何年間も保管するため、適切な場所に置いておく必要があります。
電子化をすることによって、これらの保管にかかるコストを削減できます。
一元管理で共有・閲覧が容易に
契約書を確認しようとしてファイルを探して開き、一枚一枚めくって確認したら、お目当ての契約書は別のファイルにあった。契約書が紙のままでは、こんなことも起こりがちです。
契約書を電子化することで、担当者の誰もがすぐにその契約書の内容を確認できます。PCの前から動かずに内容の閲覧・共有が可能になり、手間がかかりません。
検索性の向上
電子化した契約書をクラウド内で分類分け、保存をしておくことで、契約書を探す手間が省けます。
契約をした年月日や取引先企業の名目で分類分けをしておくと、さらに管理がしやすい環境にできるでしょう。
文書紛失の防止
紙面での契約書であれば、持ち運びや管理の際に紛失の恐れがあります。電子化することで、紛失の可能性は低くなります。
もし会社で火事が起こってしまった場合でも、クラウド化やデータ分散して保管していれば、契約書のデータは失われません。
契約書を電子化する際の注意点
契約書や請求書など、重要書類を電子化するときの注意点について解説します。
以下の内容に注意をして、電子化の作業を行いましょう。
原本を廃棄できない場合がある
契約書の内容や状態によっては、元本をすぐに廃棄できない場合があります。
例えば、契約書に添付した印紙税に過誤納があった場合、還付には原本の提出が必要です。収入印紙が添付された契約書の原本は、還付請求の時効である5年間は廃棄しないことが無難です。
他にも、行政や裁判所から許認可の申請案件によっては、原本提示を求められることがあります。
また、民事訴訟法においてはスキャン保存した契約書を「準文書」として扱うため、証拠物件としては原本に比べて一段劣るものと評価をされる危険性があります。したがって訴訟などに関わる恐れがある契約書の原本も、廃棄しないことをおすすめします。
自社で作成した契約書の場合も、その種類ごとに保存期間が決まっているため、その期間は原本を保存しておきましょう。
スキャン作業に手間がかかる
契約書を電子化するためには、文書のスキャン作業が必要です。スキャン作業だけではなく、電子化が完了するまでに以下のような手間のかかる作業が多くあります。
・ステープラーの針や付箋を外す
・スキャンする前と後の契約書原本の管理
そのため、これまでの契約書を電子化しようとする場合は、人員を確保しましょう。
人員の確保が難しい会社は、スキャン代行業者に依頼する方法もあります。ただしスキャン代行業者に依頼する場合でも、ある程度は自社で準備を行う必要があるため、事前に確認をしておきましょう。
データの管理・保全が必要
契約書を画像としてスキャンするだけでは、閲覧や共有が困難です。契約内容や契約相手によって分類タグの設定をする、スキャンしたデータをクラウドで管理するなど、スキャン後のデータ管理を視野に入れた作業が必要でしょう。
ただし、電子帳簿保存法施行規則で検索機能に関する規定についても定められています。具体的には検索項目と、日付や金額を範囲検索できるようにするなどの規定です。
スキャン作業を自社で行う場合は、基準を確認したうえで、条件を満たした内容で設定を行いましょう。
今後のデータ更新の方法をスキャン作業前に決めておくことで、契約更新時もスムーズに作業が進みます。
スキャン保存の基準とは
前述しましたように、スキャン保存にはいくつかの基準があります。以下にそれらをまとめます。
スキャン保存を許可された書類
国税関係の書類のうち、スキャン保存の対象となるのは相手から受領した契約書・請求書・領収書など、もしくは自社で作成した契約書・請求書・領収書などの控えです。具体的には以下の通りです。
重要書類(重要度・高) |
重要書類(重要度・中) |
一般書類(重要度・低) |
契約書 |
預かり証 |
検収書 |
出典:国税庁「Ⅰ通則【制度の概要等】|国税庁」
スキャン形式の基準
スキャン保存の際には、保存時に改ざん・削除を防止するための対策が求められる一方、内容が容易に確認できる可視性も必要です。以下に具体的な基準をまとめます。
要件 |
重要書類 |
一般書類 |
一定水準以上の解像度による読み取り |
200dpi以上 スマートフォンなどで撮影する場合、約388万画素以上であること |
|
カラー画像による読み取り |
赤・青・緑それぞれ256階調(約1677万色)以上 |
カラー画像ではなく白黒での読み取りも可能 |
入力期間の制限 |
次のいずれかを選択 |
適時に入力 |
タイムスタンプの付与 |
「一般財団法人日本データ通信協会」が認定するタイムスタンプを付与する※1 |
|
解像度および階調情報の保存 |
必要(2024年1月1日以後不要) |
|
大きさ情報の保存 |
実寸が判別できる情報を、何らかの形で残す必要あり(2024年1月1日以後不要)※2 |
不要 |
ヴァージョン管理 |
必要 |
必要(2024年1月1日以後不要) |
入力者等情報の確認 |
必要(2024年1月1日以後不要) |
|
スキャン文書と帳簿との相互関連性の保持 |
必要 |
必要(2024年1月1日以後不要) |
見読可能装置の備え付け |
14インチ以上のカラーディスプレイで、4ポイント文字の認識ができること |
左に同じ。ただしグレースケールで保存している場合はカラー対応は不要 |
整然・明瞭出力 |
可能なシステムが必要 |
|
電子計算機処理システムの開発関係書類などの備え付け |
以下のような書類を備え付けること ●システム基本設計書 |
|
検索機能の確保 |
次の要件による検索ができること※3 ●取引年月日、取引先、取引金額 ●日付または金額の範囲を指定して検索 ●複数の記録項目を組み合わせて検索 |
※1修正や削除をした場合にその内容が確認することができるか、入力期限内に電子データの保存が確認できるクラウドシステムなどであればタイムスタンプは不要
※2受領者が読み取る場合、該当書類の大きさがA4以下の場合は情報の保存は不要
※3税務職員によるデータのダウンロードの求めに応じる場合、範囲指定での検索機能・複数の記録項目を組み合わせての検索機能は不要
出典:国税庁「Ⅱ 適用要件【基本的事項】|国税庁」
スキャン代行業者とは
スキャン代行業者とは、文書のスキャニング作業を専門で請け負う業者です。スキャニング作業だけではなく、以下の作業を請け負う場合もあります。
・スキャンデータ内の文字をコンピューターで検索できるよう変換するOCR処理
・文書のパスワード設定などのセキュリティ処理
・検索性向上のためのフォルダ構築やファイルのリネーム
電子化した契約書を今後どのような形で分類・保管・利用するか、またオプションも含めどこまでのサービスを依頼するかという視点を持って業者は選びましょう。
スキャン代行業者に依頼する際の手順
ここからは、スキャン代行業者に依頼するときの手順についてご紹介します。
初めてスキャン代行業者を利用する方は参考にしてください。
問い合わせ
スキャン代行業者に、困っている内容について問い合わせをしましょう。
業者によって、業務内容や料金が異なります。問い合わせフォームより連絡を取りましょう。
見積もり
依頼したい業務について、見積もりを取ります。
業者に作業内容を確認して、その料金を提示してもらいましょう。そのとき、料金に含まれる内容と、オプションで必要な作業について確認します。
契約
作業内容や料金に納得した場合は、契約を結びます。
契約時に、守秘義務に関する契約書や委託契約書を締結する場合もあります。このとき納期については、よく確認をしておきましょう。
スキャニング作業
依頼したい契約書を、代行業者に託しましょう。原稿を入稿する方法は、業者への持ち込みや郵送など業者から指定があります。
元本が業者に届き次第、以下の作業が行われます。
・スキャニングの準備
・スキャニング作業
・ファイル名の編集
・最終確認
納品・請求
スキャニングが終わった契約書をデータの状態で受け取ります。自社側で原本の返却を求める場合は、それらも返却してもらいます。
内容に相違がないことを確認して、支払いを完了させましょう。
スキャン代行業者を選ぶ際のポイント
スキャン代行業者に依頼したいが、どの会社に依頼をすればよいか分からない方へ向けて、業者を選ぶポイントについて解説します。
以下3つのポイントを押さえて、業者を選びましょう。
電子化データにどこまでの機能性を求めるか明確にする
代行業者によって、スキャンに伴う作業内容が異なります。
・検索が可能なファイル名にリネームする
・重要項目を抜き出して一覧化
以上のような電子データの利便性を挙げる処理を依頼すると、代行業務にかかる費用も上がります。
電子データにどこまでの機能性を求めるか、依頼前に明確にしておきましょう。
セキュリティ性の高さ
契約書の原本を預けるため、セキュリティ対策は重要です。
代行業者がプライバシーマークや情報セキュリティマネジメントシステムなどの認証を受けているかどうかは、十分なセキュリティ対策を行っているかを判断するポイントの1つです。
スキャニング作業時だけではなく、契約書の輸送時のセキュリティ対策も確認しましょう。
原本の保管・処理方法
代行業者によって、原本の取り扱い方法は異なります。スキャン作業後の原本を破断、廃棄できるかどうかについて、確認しましょう。
必要な原本のみ抽出して、返却してもらえる業者もあります。求める条件に合った業者を選びましょう。
まとめ
契約書のスキャン代行業者について、メリットや依頼手順を解説しました。
社内の効率化やペーパーレス化を進めたい会社にとっては、スキャン代行業者を活用することで、より円滑に業務を進められます。
求める業務内容に合った代行業者を探して、作業内容や料金を比較しましょう。