店舗情報管理に最適な方法は?全ての管理方法を比較して解説します
施錠を外し、キャビネットの扉を開けると、整然と並ぶ厚紙ボックスが15個。前面には、各店舗の名前が書かれています。そして、そのボックスの中には、賃貸借契約書、FC契約書、リース契約書など、多数の契約書の原本が保管されています。
その時、デスクの電話が鳴りました。「会議に使いたいから、すぐに全店舗の賃貸借契約書を持ってきてくれ」という上司からの指示です。15個のボックスから、賃貸契約書を取り出して会議室に急ぎます。
戻ると、今度は総務部から「各店舗の防火責任者に連絡を取りたいので、一覧表が欲しい」という要望のメールが届きます。「防火担当は総務部の管轄なので、私ではわかりません」と返信すると、すぐに「あなたの前任者が『ウチでやるから大丈夫』と言っていたじゃないですか」と怒りの再返信。
多店舗経営における店舗情報管理は、契約書の原本を紙で管理しているだけで大丈夫でしょうか。一歩進んで、PDFにするのがいいか、Excelを使った管理台帳が必要なのか、それとも、システム化か、と悩まれている契約事務担当者、出退店戦略担当者、そして経営層の方も多いと思います。
このコラムでは、そんなお悩みにお答えする情報を提供いたします。
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契約書のファイリング方式
一般に、賃貸借契約書などの店舗情報の書類は「店舗毎」の分類で保管されていると思います。でも「全店舗の賃貸借契約書を比較検討して、新しい店舗の契約の際に役立てたい」という利用目的が発生した場合はどうでしょうか。また「全店舗にあるリース物件の料率を比較して、値下げ交渉に利用したい」という要望が発生したらどうすればいいのでしょうか。
全ての「店舗毎」のファイルボックスから、目的の書類だけを取り出す必要があり、大きな手間がかかります。では、その目的に対応するために「店舗毎」の分類をやめて「利用業務毎」に分類したファイリングに変えればいいのでしょうか。そうすると、今度は「店舗Aの全容」が見えなくなってしまいます。
実は、ファイリングの分類に関するこのジレンマは、どんな業態の会社、どんな部署でも起きており、ファイリングの専門家に質問しても「ファイリングする資料は、各企業の状況に合わせて目的別に分類しましょう」という回答が返ってくることが多く、これという決め手はありません。
ただ、多店舗経営企業における店舗情報管理という観点からは、やはり「店舗毎」の管理が妥当と言えます。「店舗名を記載したファイリングボックスを利用して、店舗名+書類名のタグをつけた二つ折りのファイルに書類を挟んで保管する。二つ折りのファイルは契約書の種類によって色分けする」という方法が、最も一般的だと思われます。
このファイリング分類の「店舗毎か」「利用業務毎か」という悩みは、この後の章にも関連する重要なポイントです。単純な問題かもしれませんが、是非、頭の片隅に入れておいてください。
さて、契約書の原本を保管することは、関連する法律によって義務付けられていますので、避けることはできません。ですが、そこには、下記のような問題や課題があります(契約書の中には、電子契約書が利用される場合もありますが、ここでは紙で保管している場合を中心に解説しています)。
契約書「紙保管」の問題と課題
問題
- 紛失の可能性がある
- 資料として利用すると破損/汚れの可能性がある
課題
- 保管場所が必要
- 保管場所の物理的なセキュリティ対策が必要
契約書のPDF化
保管場所に関する課題は法的規制への対応と問題の対応の両方のために必要なことですが、問題への対応方法の第1歩は「契約書類のPDF化」です。多くの企業では、すでに契約書をPDF化されていると思います。そして、個人用のパソコンではなく、共有サーバーかクラウドサービスを利用してそのファイルを保存されているでしょう。
この時の分類方法は、やはり「店舗毎」だと思いますし、ファイル名は「店舗名+契約書類名」となっているに違いありません。
PDFにしておけば、破損や汚れの心配はありません。ただし、次の問題が新たに発生します。
PDF化の次に出てくる問題
- 誤って削除してしまう可能性がある
- この場合のPDFは画像タイプなので、内容の検索はできない
- あくまで契約書のコピーであり、店舗情報管理の項目すべてを満たしている訳ではない
Excelでの契約管理台帳
画像タイプのPDFは、言い換えると「テキストではないデータ」です。したがって、文字の検索はできません(WordやExcelを直接、PDFとして保存するとテキスト形式のPDF になるので、内容の検索ができます)。
また、前述のように、契約書をPDFにしただけでは、店舗情報としての管理項目(例:電話番号、営業時間、座席数、店舗責任者名等)が不足しているのです。
つまり、PDFでは、資料の保管はできるが、調査、分析の業務には利用できないという欠点があることになります。
この欠点を補う次のステップとして利用されるのがExcelに代表されるスプレッドシートです。Excelの場合、ファイル全体を「ブック」と呼び、それぞれのスプレッドシートを「シート」と呼びます。
「ブック」、「シート」「それぞれの行」の関係はキャビネット内のファイルボックスとそれぞれのファイル、そしてそこに書かれている契約情報の関係に類似しています。
したがって、Excelで管理する場合も、これらと業務の関係を分析し、契約書に足りない情報の管理も含めてうまく利用するようにしなければなりません。
これで、全てが解決したのでしょうか。残念ながら、まだ、次の問題が残っています。
Excel管理の次に出てくる問題
- Excelは、時々、壊れる
- 「誰がどこまで使えるか(入力、更新、削除、照会)」のセキュリティの設定が難しい
- 履歴情報のように、1店舗に対して情報が時系列で必要な場合(メンテナンス履歴情報等)に対応できない
- 管理情報の追加が難しく、予め完全なフォーマットを作ることが難しい
それぞれの問題を解消する為に何が必要か
これまで、「契約書原本の保管」「PDFでの保管」「Excelでの台帳管理」の方法と、そこで生まれる問題を説明してきました。ここで立ち止まって、「多店舗展開企業の店舗情報管理には何が必要か」という観点から、あらためて、主な要件をまとめてみたいと思います。
多店舗展開企業の店舗情報管理に必要な要件
- 法規制対応のため、契約書の原本を保管する必要がある
- 保管している契約書原本を破損・紛失しないようにする
- 契約書は盗難・改ざんされないように保管する
- 契約書の情報は店舗毎に、随時、閲覧できる
- 契約書の情報は契約種別毎に、随時、閲覧できる
- 契約書の内容を検索することができる
- 契約情報は誤操作で削除されない
- 契約情報を格納したファイルが壊れない
- 契約書に記載された以外の店舗情報も管理できる
- 店舗管理情報と契約書を紐づけて見ることができる
- 担当者毎に情報の入力、更新、削除、照会の役割が設定できる
- 管理項目が追加しやすい
- 店舗情報をもとにしたアクションが取れる(契約更新など)
- 社内で情報共有や問い合わせ対応ができる
- 蓄積した情報を分析業務に活用することができる
情報管理という言葉からは、要件11の「情報の入力、更新、削除、照会」が思い浮かびます。それだけではなく、要件13、14、15の「情報の活用」も大きなポイントになります。情報は、使ってこそ価値のあるものです。
また、小売業、飲食業、サービス業については要件9「契約書以外の店舗情報」も重要であり、管理方法を工夫しなければ、業務効率もなかなか上がりません。
なぜ契約書管理システムだと足りないのか
前章で列挙した要件のうち、要件1~3は、「契約書原本の保管」「契約書のPDF化」に関わるものです。
「契約書原本の保管」は法的要請なので避けることはできず、Excel管理やシステム活用等、どういった管理方法を取るにせよ、破損・紛失・盗難・改ざんがないようにしっかりとした保管が必要です。
要件4以降の項目については、管理方法によって、より効率的な管理を実現することが可能です。「Excelでの情報管理」「(一般的な)契約書管理システム」「店舗情報管理システム」の3つを対象に比較表をお示しします。
前述のようにExcelでの情報管理においてもいくつかの問題点があり、この問題点に対応するために「(一般的な)契約書管理システム」「店舗情報管理システム」が開発されていますので、より効率化を目指した検討に御活用下さい。
(〇:可能、✕:不可能、△:一部可能/可能だが手間がかかる)
Excelでの 情報管理 |
契約書管理 システム |
店舗情報管理システム |
|
---|---|---|---|
要件4 契約書が店舗毎に閲覧できる |
× |
△ |
○ |
要件5
契約書が契約種毎に閲覧できる
|
× |
○ |
○ |
要件6 契約書の内容が検索できる |
○ |
○ |
○ |
要件7 契約情報は誤操作で削除されない |
× |
○ |
○ |
要件8 契約情報を格納したファイルが壊れない |
△ |
○ |
○ |
要件9 契約書に記載された以外の店舗情報も管理できる |
△ |
× |
○ |
要件10 店舗管理情報と契約書を紐づけて見ることができる |
× |
× |
○ |
要件11 担当者毎に情報の入力、更新、削除、照会の役割が設定できる |
× |
○ |
○ |
要件12 管理項目が追加しやすい |
△ |
× |
○ |
要件13 店舗情報をもとにしたアクションが取れる |
△ |
× |
○ |
要件14 情報共有や問い合わせ対応ができる |
△ |
○ |
○ |
要件15 分析業務に情報を活用できる |
△ |
△ |
○ |
この表が示すように、全ての要件に対する最適解は「店舗情報管理システム」です。
一般的な契約書管理システムは、あくまで、契約書を管理するためだけのものであり、管理情報と店舗を紐づけることができず、アクションにもつながらないため、店舗情報を管理するには物足りません。店舗情報管理システムの導入によって、はじめて、作業時間削減等の業務の効率化や情報の戦略的利用が実現するのです。
また、店舗毎に紐づける情報(要件10)について、店舗情報管理システムでは、契約書情報を紐づけて管理出来るだけでなく、修繕履歴や協議履歴などの履歴情報、図面や写真、防火・防災管理者選任届や衛生管理者選任届等のデータ類も含まれ、これらが業務の高度化に役立つことになります。
結論ありきのようにお感じになるかもしれませんが、このように要件を抽出することは、「では、どんなシステムがいいのか」を検討する際には重要なポイントとなります。
オンプレミス?それともSaaS?
店舗情報を効率的に管理するためには、店舗情報管理システムが最適であることは前章で明らかになりました。
では、店舗情報管理システムを導入する際に、自社独自でシステム開発を行う方法(オンプレミス方式)と、予め開発されたシステムがクラウド上に準備されている方法(SaaS方式)とではどちらがいいのでしょうか。
一般に、自社向けにシステム開発を行うオンプレミス方式の場合は「業務分析→要件定義→データ設計→仕様設計→プログラミング→テスト→環境準備(データ準備、サーバー準備等)→実運用」という道をたどります。自社向けのシステムなので、要件定義がしっかりできれば、自社業務に最適なシステムができあがります。
しかし、これには、とても多くの労力(+精神力)とコストと時間がかかります。コストについていえば、ゆうに1千万円を超えるでしょう。また、実運用を開始した後も、システムの安定稼働に労力とコストが必要です。
一方、SaaS方式の場合、店舗情報管理についての多くの会社のベストプラクティスを集積してシステムが作られています。
「自社独自のシステム」というわけにはいきませんが、先に列挙した要件は間違いなく備えていますし、列挙した要件以上の機能も加えられています。
また、利用開始までにかかる労力や時間とコスト、そして、実運用でのコストについては、オンプレミス方式とは比較にならないくらいコストパフォーマンスとタイムパフォーマンスが良く、インターネットをはじめとしたクラウドサービス技術のたまものだと言えます。
Pro-Sign(店舗情報管理システム)で解消できる課題
プロレド・パートナーズが提供する「Pro-Sign」はSaaS方式の店舗情報管理システムです。
2009年の創業以来、数多くのコンサルティング支援の中で認識したクライアント様の物件管理に関する多くの課題やニーズをもとに、弊社のナレッジやノウハウを凝縮して開発、展開しています。
もちろんこのコラムで述べてきたような要件は全て備えていますが、多くのクライアント様や、CRE戦略専門コンサルタントの声を基に、より正確に/効率良く情報管理を行うための機能が組み込まれています。
※店舗情報管理でよくある課題と解決策
まとめ
このコラムでは、契約書類の保管から始まる契約管理業務の効率化、適正化、高度化について、その要件と対策のステップを確認し、SaaSシステム化の優位性と、弊社のPro-Signの御紹介をさせていただきました。
システムは導入するだけで完了ではありません。是非皆さまにとって最適な管理方法を実現する一助になればと思います。
また、このコラムでまとめた内容について、より詳細なホワイトペーパーも準備しておりますので、是非併せてご参照下さい。