防火管理者が必要かどうか判断する3つの項目!選任条件や資格取得方法も紹介


目次[非表示]

  1. 1.防火管理者が必要かどうかの判断基準
    1. 1.1.建物の使用用途
    2. 1.2.建物全体の収容人数
    3. 1.3.建物の延べ面積
  2. 2.テナントなら防火管理者は不要?
  3. 3.防火管理者には誰がなるべき?選任条件はある?
  4. 4.防火管理者の資格取得方法
  5. 5.防火管理者の役割や業務内容
    1. 5.1.火災が発生しないように予防する
    2. 5.2.火災発生時に緊急対応をする
    3. 5.3.消防署と連携し火災に備える
  6. 6.多店舗経営における防火管理者トラブル事例
    1. 6.1.防火管理者の再講習受講漏れ
    2. 6.2.本部で管理する防火管理者情報の不備
    3. 6.3.新任防火管理者の受講漏れ
  7. 7.多店舗経営での情報管理が難しい理由
    1. 7.1.管理項目が多く管理工数がかかるから
    2. 7.2.更新頻度が高く更新漏れが発生しやすいから
    3. 7.3.各店舗の業務状況がわかりにくいから
  8. 8.防火管理者が必要かどうかは建物の条件で判断しよう


防火管理者とは、一定の基準を満たした建物に対し選任義務が生じる、防火管理における監督者です。
 
自社の事務所や店舗に防火管理者が必要かどうか、判断基準に悩む担当者の方もいるでしょう。
 
本記事では、防火管理者が必要となる判断基準や、テナントにも選任が必要かどうか、防火管理者の選任条件や資格取得方法などを詳しく解説しています。この記事を参考に、自社物件に防火管理者が必要かどうか検討を進めましょう。
 
防火管理者の資格を維持するには、定期的に再講習の受講が必要です。しかし、複数の店舗を経営していると防火管理者の更新期限などの管理は手間がかかり、つい漏れてしまいがちです。
 
防火管理者の管理情報を含む複雑な情報管理が面倒なら、多店舗情報管理ツールPro-Signが役立ちます。
 
店舗数の多い大手企業でも採用されるPro-Signなら、情報を店舗ごとに紐づけて管理できるため、店舗情報の一元管理を効率化できます。



防火管理者が必要かどうかの判断基準


防火管理者が必要かどうかの判断基準は次の3つです。
 
●建物の使用用途
●建物全体の収容人数
●建物の延べ面積

具体的には、以下のようなケースを除き、防火管理者の選任が必要となります。

●建物の用途が特定用途かつ収容人数が30人未満(介護施設や障害者入所施設などは10人未満)
●非特定用途で収容人数が50人未満
 
建物に防火管理者が必要かどうか判断する基準について、使用用途・収容人数・延べ面積と、それぞれ詳しく見ていきましょう。


建物の使用用途

建物は使用用途により「特定防火対象物」と「非特定防火対象物」にわかれます。
 
特定防火対象物とは特定の用途に使用する建物のことで、利用者がある程度特定されています。一方、非特定防火対象物は使用用途が特定されておらず、不特定多数の人が利用する建物です。
 
建物の使用用途による種類の違いは下表のとおりです。

建物の種類

対象施設・使用用途

特定防火対象物
(緊急時に避難が困難な人が出入りする施設)

・老人ホームや障がい児支援施設など、避難が困難な要介護者が主な入居者の施設
・救護施設
・乳児院
・障がい児入所施設など

特定防火対象物

(上記に該当しない施設)

・劇場、映画館など観覧場
・集会場、遊技場、カラオケボックスなど
・飲食店、カフェ、キャバレーなど
・百貨店、物品販売店などの店舗
・ホテルなど宿泊所
・病院、診療所、幼稚園、老人デイサービスなどの福祉施設
・蒸し風呂・サウナなど

非特定防火対象物

・マンション、寄宿舎などの共同住宅
・学校、図書館、博物館、美術館など
・公衆浴場(蒸し風呂・サウナを除く)
・駐車場、船舶、航空機の発着場や車体の格納庫
・神社、寺院、教会など
・工場、作業場、倉庫、撮影スタジオなど
・重要文化財

参照:東京消防庁「防火対象物の用途による特定用途・非特定用途の分類

特定防火対象物は、非特定防火対象物より防火管理者の設置基準が厳しいです。さらに、緊急時に避難が困難な人が出入りする特定防火対象物の場合、防火管理者の設置基準がより厳しくなります。
 
これは特定防火対象物が火災が発生しやすい建物で、火災発生時の被害リスクが大きいと考えられているためです。反対に、非特定防火対象物は火災発生のリスクが比較的小さい建物と考えられているため、基準が少しゆるくなっています。
 
火災が発生する可能性と火災発生時の被害リスクが大きい建物ほど、収容人数が少なくても防火管理者設置の基準が厳しいと覚えておけば、使用用途による建物の違いがわかりやすいです。


建物全体の収容人数

建物全体の収容人数によっても、防火管理者の選任義務は発生します。具体的には以下の表のとおりです。

建物の種類

収容人数

特定防火対象物
(緊急時に避難が困難な人が出入りする施設)

10人以上

特定防火対象物(上記に該当しない施設)

30人以上

非特定防火対象物(不特定多数の人が出入りする施設)

50人以上

参照:東京消防庁「<安全・安心情報><事業所向けアドバイス><防火管理 実践ガイド:防火管理者が必要な防火対象物と資格>

建物の使用用途の項目で説明したように、特定防火対象物は建物の使用用途の特性上、火災リスクや火災発生時の被害リスクが甚大です。そのため、収容人数が10人以上または30人以上と少なくても防火管理者の選任義務が発生します。
 
一方、非特定防火対象物は、特定防火対象物に比べて火災リスクが比較的小さいと想定されるため、収容人数50人以上で選任義務が生じます。
 
なお、上記に該当しない場合、防火管理者の選任は必須ではありません。しかし、収容人数はテナント単位ではなく建物全体での人数であるため、防火管理者が必要な建物は多いことに注意しましょう。


建物の延べ面積

防火管理者の資格のうち「甲種防火管理者」「乙種防火管理者」のどちらの選任が必要かどうかは、建物の延べ面積によっても変わってきます。判断基準は以下のとおりです。

建物の種類

延べ面積

選任すべき管理者

特定防火対象物
(緊急時に避難が困難な人が出入りする施設)

・延べ面積の条件はなし
・収容人数が10人以上

甲種防火管理者

特定防火対象物(上記に該当しない施設)

300㎡以上

甲種防火管理者

300㎡未満

甲種または乙種防火管理者

非特定防火対象物

(不特定多数の人が出入りする施設)

500㎡以上

甲種防火管理者

500㎡未満

甲種または乙種防火管理者

参照:東京消防庁「<安全・安心情報><事業所向けアドバイス><防火管理 実践ガイド:防火管理者が必要な防火対象物と資格>

老人短期入所施設や福祉施設などの緊急時に避難が困難な人が出入りする施設や、テナントは例外扱いのため注意しましょう。延べ面積ではなく収容人数で判断が必要です。


テナントなら防火管理者は不要?

防火管理者の選任が必要になる建物においては、すべてのテナントおよび建物所有者で防火管理者が必要となります。
 
商業施設に自社店舗がテナントとして入居しており、収容人数・面積が選任基準を満たさない場合について考えてみましょう。
 
この場合、自社店舗のみで考えれば防火管理者設置義務はないように思えますが、建物全体で防火管理者設置基準を満たしている場合、自社店舗も防火管理者を選任しなくてはなりません。
 
また、テナントは多くの場合、甲種防火管理者の設置が安全で、一部テナントの収容人数が少ない場合のみ乙種で対応可能です。

参照:東京消防庁「<安全・安心情報><事業所向けアドバイス><防火管理 実践ガイド:防火管理者が必要な防火対象物と資格>


防火管理者には誰がなるべき?選任条件はある?



防火管理者は誰がなっても問題ありません。ただし、管理的・監督的地位がある者が、以下のどちらかの条件を満たす必要があります。
 
●防火管理講習を修了する
●防火管理者として必要な学識経験を有する
 
防火管理講習とは、防災管理者資格を取得するための講習です。選任対象となる建物の種類により「甲種」「乙種」いずれかの防火管理者資格を取得します。
 
なお、防火管理者として必要な学識経験を有する者であれば、防火管理講習を受けずとも管理者になれます。講習を受けない場合は、次の資格や経験などを持っていることが必要です。
 
●安全管理者
●防火対象物点検資格者
●危険物保安監督者
●1級建築士  など
 
複合施設など建物内で管理がわかれる場合は、防火管理者の他に統括防火管理者も必要となります。選任漏れが無いよう注意しましょう。

参照:
東京消防庁「<安全・安心情報><事業所向けアドバイス><防火管理 実践ガイド:防火管理者が必要な防火対象物と資格>
東京消防庁「<安全・安心情報><事業所向けアドバイス><統括防火防災管理者制度>
札幌市「統括防火管理者について/札幌市


防火管理者の資格取得方法

防火管理者の資格は、防火管理講習を修了することで取得可能です。講習は以下の人物や機関が実施可能です。
 
●都道府県知事
●消防本部または市町村の消防長
●総務大臣登録機関である一般財団法人日本防火・防災協会
 
申し込み方法や講習時間、受講料などは講習を行う期間により異なるため、あらかじめ各所に確認しましょう。
 
なお、日本防火・防災協会による講習時間や受講料は以下のとおりです。

資格種別

講習時間

受講料(税込)

甲種新規講習

約10時間(2日間講習)

8,000円

乙種講習

約5時間(1日間講習)

7,000円

甲種再講習

約2時間(半日講習)

7,000円

※2024年8月時点
参考:一般財団法人日本防火・防災協会「防火管理講習|講習について


防火管理者の役割や業務内容

防火管理者の主な役割や業務内容には、次のようなものがあります。
 
●火災が発生しないように予防する
●火災発生時に緊急対応をする
●消防署と連携し火災に備える
 
義務となっている業務を怠った場合、法令違反となり罰則が課されることもあるため、確実な取り組みが必要です。なお、防火管理者と防災管理者は異なります。混同しないようにしましょう。


火災が発生しないように予防する

火気使用やその取り扱いに対して監督業務を行い、火災防止に努めることは防火管理者の重要な業務の一つです。
 
火災は、火災の発生原因をできるだけ小さくすることで防げます。具体的には以下のような取り組みが有効です。
 
●火気使用時のルール策定
●危険物の管理体制構築
●火気使用者の教育や訓練
 
火気や危険物の取り扱いや管理体制を確立し、作業者に周知します。また、教育や訓練は一度実施するだけで終わらず、定期的な取り組みで作業者の安全意識を高めましょう。


火災発生時に緊急対応をする

万が一火災が発生した場合に、火災の初期対応や避難誘導なども防火管理者の役目です。迅速な初期対応で被害拡大を防止し、人命・財産の損失を最小限に抑えます。
 
また、以下を実施し、いざ火災が発生したときに備えておくことも重要です。
 
●消火・防火設備の点検
●安全な避難経路の確保
●定期的な消火・通報・避難などの訓練


消防署と連携し火災に備える

緊急時にパニックに陥らないためにも、あらかじめ消防署と連携して火災に備えましょう。常に以下のような対応で消防署と連携を取り、火災発生時にも円滑に対応できる体制を整えることが大切です。
 
●消防計画の策定と届出
●消防設備を活用した訓練
●消防設備点検結果の報告
 
とくに、消火器やスプリンクラーなどは、火災発生時に人命を救う重要な設備です。緊急時に問題なく使用できるよう定期的に点検・訓練し、消防設備点検結果報告書を管轄の消防署に届け出ましょう。
 
参考:東京消防庁「<安全・安心情報><事業所向けアドバイス><「管理権原者」と「防火管理者」とは>


多店舗経営における防火管理者トラブル事例

多店舗経営にありがちな防火管理者のトラブル事例は、以下のとおりです。
 
●防火管理者の再講習受講漏れ
●本部で管理する防火管理者情報の不備
●新任防火管理者の受講漏れ
 
複数の店舗を展開していると防火管理者の管理が難しく、トラブルも発生しやすくなります。ここからは以下の過去事例をもとに、原因や未然に防ぐ術はなかったかを見ていきましょう。


防火管理者の再講習受講漏れ

一つ目の事例は、防火管理者の再講習の受講が漏れてしまい、一時的に管理者不在になってしまったケースです。収容人数が300人以上の特定防火対象物の甲種防火管理者は、定期的に講習を受講しなければなりません。
 
しかし、ある企業では本部から防火管理者となるマネージャーに指示を出すも繁忙期で業務がひっ迫し、防火管理者の再講習を受講できませんでした。そのため防火管理者の有効期限が切れてしまい、防火管理者が一時不在となる結果になってしまいました。
 
本事象は、防火管理者の管理漏れが原因です。管理漏れを防ぐためには、資格期限のある者について取得日や再講習日などを適切に管理し、余裕をもって再講習の通知をすることが重要です。


本部で管理する防火管理者情報の不備

二つ目の事例は、防火管理者の情報に不備があり、適切に管理できていなかったケースです。
 
ある企業でISO規格取得のために防火管理者の選任状況を確認していたところ、本部で管理する情報に不備が生じていることに気付きました。
 
本事象における問題点は、正しい情報を確認する手間と時間がかかることと、防火管理者の管理ができていないことです。表計算ソフトや紙での管理では管理情報に不備が生じる場合が多いため、情報管理ツールを活用も視野に入れた抜本的な改善が必要となる事例です。


新任防火管理者の受講漏れ

三つ目の事例は、新規店舗で防火管理者の受講漏れが発生したケースです。
 
ある企業では新規店舗の防火管理者候補者と連携が取れず受講漏れが発生したため、店舗の立ち上げに余計な時間がかかってしまいました。
 
本事象では、選任完了までのフローができておらず、管理体制も無いことが原因に挙げられます。あらかじめ適切な店舗の立ち上げフローを確立し、受講日や修了日を把握、必要に応じてリマインドするなど管理体制の構築をすれば防止できる事例です。


多店舗経営での情報管理が難しい理由

多店舗経営で防火管理者の情報管理が難しい理由は、次の3つが挙げられます。
 
●管理項目が多く管理工数がかかるから
●更新頻度が高く更新漏れが発生しやすいから
●各店舗の業務状況がわかりにくいから
 
各項目について、詳しく確認していきましょう。


管理項目が多く管理工数がかかるから

多店舗経営の場合、管理項目が多く工数がかかってしまうため、情報管理が難しくなります。
 
他の業務を圧迫しながら工数のかかる管理業務を並行して行うため、管理担当者は高負荷になりがちです。さらに、紙で管理しているところは余計に工数が大きく、必要な情報が見つけにくい・情報の最新化が遅れるなど不備につながりやすくなります。


更新頻度が高く更新漏れが発生しやすいから

多店舗経営では、店舗数が多いほど防火管理者も多く存在するため、その分情報の更新頻度が高く更新漏れも発生しやすくなります
 
また、防火管理者情報を表計算ソフトや紙で管理していると、更新漏れや不備に気付くことが困難です。リマインドなどシステムの仕組みづくりも難しいため、人の手に頼らざるを得なくなってしまいます。


各店舗の業務状況がわかりにくいから

店舗数が多くなると、防火管理者選任のためのステップを含め、各店舗の状況把握が煩雑になってきます。店舗ごとにさまざまなことが同時に進行しており、それらすべてを本部が把握することは困難です
 
とくに、防火管理者の場合、地域によって管轄の消防が異なり窓口も多かったり、地方の講習頻度の少なさから、申し込みが集中し業務過多になったりします。

他店舗を経営するなかで、防火管理者を含む情報の管理に負担を感じているなら、Pro-Sign導入をご検討ください。
 
Pro-Signでは防火管理者の資格更新や物件の契約期限など、各店舗で管理が必要な情報を店舗ごとに紐づけて一元管理できます。そのため、必要な有資格者の不在や契約の更新漏れなどのトラブルを未然に防げます。



防火管理者が必要かどうかは建物の条件で判断しよう

防火管理者は建物の用途・収容人数・面積により、選任義務が発生します。まずは自社の店舗や事務所が判断基準を満たすかどうかの確認が必要です。
 
あらためて、防火管理者が必要な条件を下表にまとめています。建物の用途、収容人数や面積などによる必要な管理者種別を確認しましょう。

建物の種類

対象施設・使用用途

収容人数

延べ面積

種別

特定防火対象物
(緊急時に避難が困難な人が出入りする施設)

・老人ホームや障がい児支援施設など、避難が困難な要介護者が主な入居者の施設
・救護施設
・乳児院
・障がい児入所施設など

10人以上

・延べ面積の条件はなし
・収容人数が10人以上

甲種防火管理者

特定防火対象物(上記に該当しない施設)



・劇場、映画館など観覧場
・集会場、遊技場、カラオケボックスなど
・飲食店、カフェ、キャバレーなど
・百貨店、物品販売店などの店舗
・ホテルなど宿泊所
・病院、診療所、幼稚園、老人デイサービスなどの福祉施設
・蒸し風呂・サウナなど

30人以上



300㎡以上

甲種防火管理者

300㎡未満

甲種または乙種防火管理者

非特定防火対象物

・マンション、寄宿舎などの共同住宅
・学校、図書館、博物館、美術館など
・公衆浴場(蒸し風呂・サウナを除く)
・駐車場、船舶、航空機の発着場や車

体の格納庫
・神社、寺院、教会など
・工場、作業場、倉庫、撮影スタジオなど
・重要文化財

50人以上



500㎡以上

甲種防火管理者

500㎡未満

甲種または乙種防火管理者


防火管理者は再講習が必要なケースがあったり、店舗の規模が変わると必要な資格の種類が変わったりします。そのため、店舗数が多いほど情報管理が困難になり、資格更新が漏れるなどトラブルにつながりやすくなります
 
防火管理者を含む店舗情報の一元化を行いトラブルを防ぐには、Pro-Signの導入をご検討ください。Pro-Signを利用すれば、次のような機能で煩雑になりがちな多店舗の情報を取りこぼしなく管理できます。
 
●店舗の情報を一元管理して必要なときに必要な情報を利用できる
●書類の期限も設定できて更新漏れによるトラブルの心配が無い
●過去のものも含めて情報共有が簡単にでき、店舗状況が簡単に把握できる
 
多店舗の情報管理に課題を感じている方は、ぜひPro-Signを活用し防火管理者や他の情報を便利に管理しましょう。



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