「生き字引」頼りは大きなリスク?業務/情報の属人化で起こる弊害とその対処方法とは

「わからないことがあったら、何でも、○○さんに聞けばいいよ。あの人は我が社の生き字引だから」「○○さんに行方不明だった書類を探してもらったら、すぐに出てきたよ。あれは、名人芸だね」「○○さんのクレーム対応は職人技だね。最初は怒っていたお客様が最後には笑うんだよ」とほめられると、個人として悪い気はしません。でも、会社全体としてみると、そこには「業務の属人化」「情報の属人化」という「属人化のリスク」が潜んでいます。

このコラムは、そんな「属人化」の危険性を分析し、その対処法を提案します。


目次[非表示]

  1. 1.生き字引、名人芸、職人技?
  2. 2.属人化しやすい業務とは
    1. 2.1.属人化せざるを得ない業務
      1. 2.1.1.高度な技術や専門の資格を必要とする業務
      2. 2.1.2.文書化/マニュアル化が難しい業務
    2. 2.2.属人化してはいけないものが属人化している業務
      1. 2.2.1.マニュアルが形骸化しやすい業務
      2. 2.2.2.担当者が限定されている業務
      3. 2.2.3.上位者が属人化を認めている業務
  3. 3.業務を属人化させやすい人とは
    1. 3.1.自分の存在を顕示しようとする人
    2. 3.2.同一業務に長年従事している人
    3. 3.3.職人気質の人
    4. 3.4.一匹オオカミ的な人
    5. 3.5.他の業務経験や知識が少なく、その業務に生き残りをかけなければいけない人
    6. 3.6.後進の指導が苦手な人
  4. 4.業務の属人化に潜むリスク
    1. 4.1.業務効率が低下する
    2. 4.2.業務の品質が不安定になりやすい
    3. 4.3.適正な人事評価が難しい
    4. 4.4.後任者への引継ぎが適正に行われない
    5. 4.5.会社全体としての情報共有がなされずに戦略的な情報利用ができない
  5. 5.形式知と暗黙知
  6. 6.属人化へのリスク対応
    1. 6.1.ドキュメンテーションを進める(業務のマニュアル化)
    2. 6.2.業務(権限)の分散化を行う
    3. 6.3.情報共有ミーティングを行う
    4. 6.4.システムを導入する
  7. 7.システム導入による業務の属人化リスクの回避と留意点
  8. 8.業務のシステム化にも「ブラックボックス化」というリスクがある
  9. 9.まとめ


生き字引、名人芸、職人技?

「生き字引」「名人芸」「職人技」と形容される方が、どの会社にも、または、どの組織にも、ひとりやふたりはいらっしゃると思います。

「生き字引」と言われる方は、担当する業務や、その業務に関する情報に精通しておられ、業務に不慣れな新入社員や他部署から異動してきたばかりの社員が質問すると何でも答えてくれます。

ただ、問題点は「聞けば答えてくれるけど、聞かないと答えてくれない」という傾向が強いことです。また、「単に経験が長い人」という意味を含むこともあり、誉め言葉だと鵜呑みにしないほうがいい場合もあります。


「名人芸」「職人技」という表現についてはどうでしょうか。

両方とも、特定の業務に対する専門性を意味しています。「名人」「職人」は伝統工芸や、機械に任すことができない工業製品などの技術者に対して敬意を払う表現です。

ただし、「芸・技」という言葉がつくことで「特定の業務だけ」「名人でも職人でもないレベル」という揶揄を遠回しに言っているケースとなることもあり、素直に受け入れて良いかどうか判断に迷うところです。

さて、この「生き字引」「名人芸」「職人芸」という表現の悪い意味の部分の共通点は何でしょうか。

それは、「属人化してはいけないものが属人化している状態」だと言えますし、周囲の社員が「自分は蚊帳の外という立場をとってしまうこと」だとも言えます。本人と周囲のネガティブな相互作用によって「業務の属人化」「情報の属人化」が起こるのです。

逆に「名人」「職人」は「属人化せざるを得ないものの専門家」と肯定的に言えるのではないでしょうか。


属人化しやすい業務とは

この章では、属人化しやすい業務を「属人化せざるを得ない業務」と「属人化してはいけないものが属人化している業務」の2つに分けてみたいと思います。


属人化せざるを得ない業務

  • 高度な技術や専門の資格を必要とする業務

メーカーの開発部門や製造部門の中でのスペシャリストのように、属人化を受け入れざるを得ない業務があります。また特別な資格(司法・会計・不動産・IT・建築・土木・医療・福祉などに関わるもの)を必要とする業務もこれに該当します。

  • 文書化/マニュアル化が難しい業務

プロセスや知識を文書にしたり、マニュアルにしたりすることが困難な業務があります。特に、得意先営業のように、特定の人を相手にする業務では、相手によって対応方法が千差万別になりますし、相手の性格や特徴は営業担当者との関係性の中でとらえられるもののため、単純にはマニュアル化して表現できないものです。


属人化してはいけないものが属人化している業務

  • マニュアルが形骸化しやすい業務

標準化が難しいと思われている業務では、マニュアル化を行うことが可能であっても、例外が多く発生し、それに対応するマニュアルが追い付かず、最終的にはマニュアルが形骸化してしまう恐れがあります。この例外対応が属人化の原因になります。

  • 担当者が限定されている業務

経営的な理由により要員の投下が難しく、限られた人員で業務を進めなければいけない場合は属人化せざるを得なくなります。これは、どの部署でも起こり得ることで、歴史的な背景が原因になることもあります。また、それとは別に、管理職のレベルでの仕事の割り振りに問題があり、気軽に担当者を固定してしまう場合もあります。

  • 上位者が属人化を認めている業務

前述の「担当者が限定されている業務」の派生形ですが、何らかの理由で、担当者の限定を経営として容認しているケースです。ただし、「一子相伝」のように機密を保たないといけない場合は「属人化せざるを得ない業務」と言えます。


既に、おわかりのように、このコラムが対象としているのは「属人化してはいけないものが属人化している業務」の話です。どちらかというと技術職よりも事務職にその傾向が強いようです。


業務を属人化させやすい人とは

では、「属人化してはいけないものが属人化している業務」において、その業務を属人化させている人のタイプを分析してみましょう(ここでは、経営上の理由でのやむを得ない属人化は対象にいたしません)。


意味が重複している場合もありますし、実際には、組み合わせとして現れるものだと思いますが、次のようなタイプが考えられます。

自分の存在を顕示しようとする人

自分に能力があるという意識が強く、「私にしかできない」と存在感をアピールするタイプ


同一業務に長年従事している人

特定の業務における長い経験と、それによって得た知識と能力が組織に貢献してきたことでと暗黙のうちに担当業務が属人化してしまったタイプ


職人気質の人

みんなで協力して仕事を進めようという考え方ではなく、自分一人で仕事に没頭してしまうタイプ


一匹オオカミ的な人

(職人気質の人と似ていますが)チームワークでの仕事が苦手なタイプ


他の業務経験や知識が少なく、その業務に生き残りをかけなければいけない人

「自分は、これしかできない/他の仕事の担当になったら困る」と薄々感づいており、その仕事にすがりついてしまっているタイプ


後進の指導が苦手な人

後輩や新しく組織に異動してきた人に業務の進め方を説明したり、指導したりすることが苦手なタイプ


実際の人の顔を思い浮かべておられるかもしれません。同時に、その人から属人化した業務を引きはがすことの難しさを想像しておられるかもしれません。


業務の属人化に潜むリスク

ここまで、属人化しやすい業務、業務を属人化させやすい人について分析を行いましたが、そこにはどんなリスクが潜んでいるのでしょうか。

最も大きなリスクは「属人化した業務を担当している人が退職や長期休暇(育児休暇なども含みます)でいなくなると、業務が停止してしまい、社内の関係部門だけではなく、社外の関係者や顧客にまで迷惑をかけてしまうこと」です。目をつぶっていた属人化が会社の損失にまでつながってしまうことは大げさな例ではありません。


また、属人化のリスクは「退職時に業務が停止してしまう」だけではなく、属人化自体に以下のリスクが潜んでいるのです。

業務効率が低下する

特定の社員にしかできない業務のため、その社員の都合次第で業務効率が左右されることになります。


業務の品質が不安定になりやすい

特定の社員が業務品質のカギを握っていますので、業務の維持で精一杯になってしまい、業務品質の向上が期待できないだけではなく、業務品質が不安定になってしまう可能性があります。


適正な人事評価が難しい

特定の社員だけで行っている業務のため、その遂行能力を他の社員と比較することができず、人事評価が適正に行われない可能性があります。


後任者への引継ぎが適正に行われない

マニュアル化がされないため、口述での引継ぎか、「見て覚える」形式の引継ぎにならざるを得ず、スムーズな引継ぎが困難になります。また、社内の人材の流動化が阻害されることにもなります。


会社全体としての情報共有がなされずに戦略的な情報利用ができない

業務の属人化は情報の属人化と同義です。つまり、属人化された業務に関連する情報が積極的に共有されることがなく、資産である情報が利用されないままになってしまいます。


形式知と暗黙知

「属人化」の話題から少し離れますが、ここで「形式知」と「暗黙知」について触れてみたいと思います。

形式知とは「目に見える形で伝えることのできるように明文化・言語化された知識」のことです。業務で言うと、マニュアル化された知識と言うことができます。

これとは逆に「暗黙知」は「目に見える形では伝えられない知識」です。「属人化しやすい業務とは」の章で話題にした「文書化/マニュアル化が難しい業務」と同じ意味だと言えます。


しかし、ナレッジマネジメントの考え方として、暗黙知を形式知に変換する方法として「共同化」「表出化」「連結化」「内面化」の4つが提唱されています。その中でも「共同化」は、暗黙知となっている業務を経験者と共有するという意味で、「ベテラン社員(属人化した業務を行う社員)と一緒に働いて仕事を覚える」ことですし、「表出化」は、暗黙知となっている業務を明文化/言語化する、つまり「マニュアル化する」という意味になります。(連結化と内面化はこのコラムとかけ離れますので割愛します)


この考え方は次章での業務や情報の属人化へのリスク対応と類似点がありますのでここで紹介させていただきました。


属人化へのリスク対応

「業務の属人化に潜むリスク」の章で、属人化のリスクを抽出しましたが、この章では、その対応策について検討したいと思います。

一般的にリスク管理の方法として「回避(リスクをなくす)」「低減(リスクを減らす)」「転嫁(リスクを保険会社のような他者に引き受けてもらう)」「受容(リスクを受け入れる)」の4つが挙げられますが、業務の属人化において取るべき対応方法は「回避」と「低減」で、「転嫁」「受容」は考えられません。

どうしてかというと、業務の属人化は、「将来に問題が発生する可能性を持つリスク」であるとともに、既に発生している「危機」であり「問題」であり、リスクの回避ではなく、問題の解消が必要だからです。


是非とも、それをご理解いただき、次の対応方法をご検討ください。

ドキュメンテーションを進める(業務のマニュアル化)

属人化されてしまった業務でも業務プロセスを「見える化」することによって、属人化を解消することができます。ドキュメンテーションの中心は業務マニュアルですが、その書き方は、文章でもいいですし、業務フローのような図でもいいと思われます。ただし、注意しなければいけない点は「業務マニュアルが完成した時点で仕事が完了したように錯覚してしまうこと」です。業務マニュアルは、あくまで、属人化回避の出発点となります。


業務(権限)の分散化を行う

多少荒療治になりますが、思い切って、属人化した業務を分散してしまいましょう。この対応方法の良いところは、業務を分散するとともに、業務マニュアルを作成せざるを得ないところにあります。この方法の留意点は、分散した結果、属人化が分散しただけにならないようにすることです。


情報共有ミーティングを行う

属人化した業務についての情報を共有するために、現在の担当者を中心として関連部署のメンバーで構成した会議体を発足させ、業務プロセスについて話し合う機会を設けるのもよい方法です。そうすることで、業務の見える化が進んでいくことになります。ただし、全容が明らかになるかどうかは会議の進め方に依存すると言えます。


システムを導入する

前の3つとは少し毛色が違いますが、属人化した業務の代替として業務システムを導入するという方法があります。この方法は属人化を回避/解消するだけでなく、いくつかの副次的な利点もあり、最も効果的な「切り札」と言えますので、次章で詳しく説明いたします。


なお、「ドキュメンテーションを進める」「業務(権限)の分散化を行う」「情報共有ミーティングを行う」の3つについては、属人化する前に行えれば効果的ですが、一旦、属人化してしまった後は、実施の難易度が高い方法となってしまいます。


システム導入による業務の属人化リスクの回避と留意点

前章で、リスク回避の方法を4つ抽出しましたが、最後にあげた「システムの導入」が、属人化を回避/解消することができるとともに、それ以上のメリットをもたらすという理由は以下の通りです。


  • 業界のベストプラクティスをもとにして業務の標準化が実現できる
  • 業務プロセスのドキュメント(マニュアル)が整備されている
  • 業務の標準化により、ジョブローテンションが容易になる
  • 業務の分散、権限の分散が可能になる
  • システムによって情報が整備されるため、情報共有が活発に行われるようになる

つまり、「システムの導入」が前章で述べた対応策の全てを含むことになるのです。


ただし、これにも留意点があります。

まず、上記の効果を意識してシステムの導入を行う必要があるということです。例としては「例外処理を作らない」「複数の部署/担当者で運用を担当する」というようなことが考えられます。そうしないと、システムを導入しても、特定の担当者にシステムが張り付いて、再び、属人化してしまうからです。

もうひとつの留意点は、導入するシステムの形態です。属人化を回避/解消するためには、どんなシステムでも良いというわけではありません。「経験豊富なコンサルティング業務をベースにした業界のベストプラクティスのシステムを導入すること」で、業務の標準化を可能にし、属人化の回避とその後のスムーズな業務運営が実現するのです。


業務のシステム化にも「ブラックボックス化」というリスクがある

「業務のシステム化が属人化対策の切り札」と結論付けましたが、1つ重要な注意点があります。

業務をシステム化する際の方法として「オンプレミス方式」があります。これは、その企業の要求を分析し、独自のシステムを開発する方式で、オーダーメイドであるため、その企業のビジネスプロセスにぴったり当てはまります。

ですが、それ故に、社内の特定の人間しかシステム開発の経緯や要求事項の意図がわからずに、時間を経るとシステムが「ブラックボックス化」してしまい、後任者が「何のためにこのシステムの機能があるのか」という疑問に誰も答えられなくなってしまうのです。

特に、「生き字引」「名人芸」「職人技」と呼ばれる方の要求をもとにシステムを開発してしまうと、数年後には、誰も知っている人がいないというサステナビリティの考え方に反する状況になってしまいます。

これを防ぐためには、前述のように、業界のベストプラクティスとコンサルティング会社の経験を結集させた当社のPro-SignのようなSaaS方式のシステムを採用することがポイントとなります。


まとめ

当コラムでは、業務の属人化や情報の属人化を回避する方法と解消策について分析を行い、最終的に「システムの導入」を提案させていただきました。

業務とひと言で言っても、その種類は様々ですが、属人化された業務プロセスや情報を社内で共有することによって、会社の経営がより戦略的に変化すると思われる業務に対して、また、その業務が停止すると、会社の機能不全が発生すると思われる業務に対して「システムの導入」で活路を見いだすことは有益だと考えています。

業務の属人化への対応方法として、当社のPro-Signを、是非、ご検討ください。


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