リース契約と賃貸借契約の違い総まとめ!契約で抑えるべきポイントとメリット・デメリットを解説
不動産における物件契約には「賃貸借契約」と「リース契約」という2つの代表的な形態が存在します。しかし、それぞれの違いや抑えるべきポイントは、一般的には知られていません。不動産に関わるビジネスでは、これらの違いをしっかり理解していないと、予期しない問題に直面してしまうことがあります。
特に、情勢が不安定な昨今だからこそ、急激な物価高騰に対応するためのリース契約の見直しに、頭を悩ませている方は多くおられることでしょう。「契約してしまったからどうにもならない」と諦めてしまう前に、契約について専門的な知識をつけることで、もしかしたら状況を改善できるかもしれません。
そこで今回は、リース契約と賃貸借契約の違いについて詳しく解説し、リース契約のメリット・デメリットをお伝えしていきます。
目次[非表示]
- 1.不動産のリース契約とは?
- 2.リース契約と賃貸借契約の違い
- 2.1.リース契約と賃貸借契約の違い一覧表
- 2.2.リース契約と賃貸借契約の違いで抑えるべきポイント4つ
- 2.3.①対象となる物件を把握する
- 2.4.②契約期間の長さはどうか
- 2.5.③修繕や、維持、保守などの管理責任がどちらにあるか
- 2.6.④契約期間中の中途解約ができるかどうか
- 3.リース契約のメリットとデメリット
- 3.1.リース契約のメリット
- 3.2.リース契約のデメリット
- 4.まとめ
不動産のリース契約とは?
リース契約とは、賃貸物件の所有者が、特定の個人に対して土地や建物を長期間にわたり使用する権利を与え、借主がその使用に対する料金(=リース料)を支払う契約形式です。
不動産のリース契約においては、土地所有者、リース会社、借主の3者を中心に展開されており、それぞれの役割とメリットは下記の様になります。
土地所有者
〇役割
・土地をリース会社に貸し出す
〇メリット
・リース会社が所有者となり、様々な手続きや固定資産税の負担から解放される
・土地の賃料収入が得られる
リース会社
〇役割
・土地所有者から土地を借りる
・借主の要望に応じて建物を建設する
・建設した建物を借主に賃貸する
〇メリット
・借主から得るリース料による収益が得られる
借主(小売業者など)
〇役割
・リース会社から建物を借りる
・建物の使用に対するリース料を支払う
〇メリット
・自身の要望に応じた建物を使用することができる
・建設費用や行政関連の手続き・支出を抑えられる
このように、3者が役割を持つと責任とリスクが分散され、各者の利益を最大化することが可能となります。
次の章では、このリース契約が賃貸借契約とどのように異なり、どんな影響をもたらすのかについて詳しく解説していきます。それぞれの契約形式の特徴を理解し、ビジネスに最適な選択をするための参考にしてください。
リース契約と賃貸借契約の違い
リース契約と賃貸借契約は、「物件を借りる」という点においてどちらも同じです。しかし、対象物件や契約期間、賃貸料など、各項目において明確な違いがあります。両者の違いをしっかり押さえることで、万が一契約を見直したい場合でも、適切に対応することが可能となります。この章では「違い」と「ポイント」についてお伝えしていきます。
リース契約と賃貸借契約の違い一覧表
リース契約と賃貸借契約は何が異なるのかを、8つの項目を挙げて表にまとめました。不動産の契約で抑えるべきポイントを把握し、契約後にどんな責任を負うのか知るためにも、各項目の違いを確認していきましょう。
項目 |
リース契約 |
賃貸借契約 |
---|---|---|
対象物件 |
借主指定の物件で、リース会社が新たに建設。 |
貸主保有の不動産/動産が対象 |
契約期間 |
・比較的長期。 ・税務上の規定により、リース期間は耐用年数の70%以上。 |
・土地は長期、オフィスや住居の賃貸は2年が一般的。 ・動産の賃貸は短期で、契約期間は使用目的により異なる。 |
賃借料 |
借主の指定で物件を建設する為、その借主との契約期間中に物件代金、及びその他の費用が全額回収できるように設定。 |
複数の借主と複数回にわたり賃貸借契約を結ぶことを前提に、物件の投資コストと諸費用が回収できるように設定。 |
解約 |
リース期間中の解約はできず、残リース料(または相当額)の違約金を支払う必要がある。 |
借主は解約権を有するが、土地や建物等の長期契約では、解約できない期間や解約予告期間を定める場合がある。 |
物件の修繕など |
借主が物件の修繕義務を負い、賃主と保守契約を締結する。 |
貸主が物件の修繕義務を負う。 |
物件の品質等の
不適合
|
リース会社は物件の品質等の不適合に対する責任を負わず、借主は賃主へ損害賠償等を請求できる。 |
貸主は物件の品質等の不適合に対する責任を負う。 |
物件の滅失・損傷 |
借主が損害を負担。貸主への損害賠償等は請求できない。ただし通常リース物件は保険が付されているケースが多く、大部分は保険で補填することができる。 |
借主に帰責事由がない場合の物件の滅失・損傷は、貸主が負担する。借主は賃借料の減額請求または契約を解除できる。 |
契約の更新 |
リース期間終了後、リース契約を更新(再リース)でき、再リース料は低価格となる。 |
賃貸借期間終了後、同一条件または新たな条件で契約を更新できる。 |
表から確認できる主な項目をまとめると、リース契約は、借主指定の新たな物件をリース会社が建設し、その物件に対する全額を回収するための賃借料を設定します。契約期間は比較的長く、リース期間は耐用年数の70%以上とされています。リース期間中の解約はできませんが、リース期間終了後には契約の更新(再リース)が可能です。
対して、賃貸借契約は、貸主が保有する不動産や動産を対象にします。土地は長期、オフィスや住居は一般的に2年が基本の契約期間です。解約権は借主が有し、一部の長期契約では解約できない期間や解約予告期間を定める場合があります。物件の修繕義務は貸主が負い、物件の品質の不適合や滅失・損傷に対する責任も貸主が負担します。
これらの違いを理解し、各々の状況や必要性に応じて最適な契約形態を選ぶことが大切です。
さらに具体的な違いを、次の「抑えるべきポイント」から読み解くことで、契約に関する悩みを解決していきましょう。
リース契約と賃貸借契約の違いで抑えるべきポイント4つ
前述の通り、リース契約と賃貸借契約は異なる点がたくさんありますが、押さえておくべきポイントを4つに絞って、前表の項目とタイアップしながらお伝えしていきます。
①対象となる物件を把握する
「対象物件」は、不動産の契約のスタート地点です。賃貸借契約は一般的に管理会社が所有、または管理している物件の中から選んで借ります。これに対し不動産のリース契約は、賃主から借りた土地に、リース会社が新たに建設した物件を借主へ賃貸します。まずはこのポイントを把握しましょう。
②契約期間の長さはどうか
「契約期間」で示したリース契約は、比較的長期(概ね30年まで)の契約期間を前提としており、対象物の耐用年数の70%以上で設定することが一般的です。しかし、賃貸借契約は物件の賃貸でも2年契約が通例であり、さらに短期で数カ月から1年というケースもあります。使用したい年数を予め想定し、必要な年数に見合う契約を行うことが必要です。
③修繕や、維持、保守などの管理責任がどちらにあるか
賃貸借契約の場合は一般的に貸主が修繕や維持管理の責任を負いますが、リース契約では借主に責任が帰属します。「物件の修繕」「物件の滅失・損傷」でも示した通り、修繕は大幅なコストを要するため、誰に責任があるのかを事前に知ることはとても大切です。
④契約期間中の中途解約ができるかどうか
最大の関心事とも言えるのが、「解約にかかる費用」ではないでしょうか。賃貸借契約は一定の解約予告期間を経て解約することが可能ですが、リース契約の場合は原則として中途解約はできません。もし解約する場合、残っているリース料金の一括返済はもちろんのこと、違約金が発生することも想定されます。無駄な出費を抑えるためにも、解約についてきちんと理解しておきましょう。
リース契約のメリットとデメリット
ここまでリース契約と賃貸借契約の違いやポイントについてお伝えしてきました。
最後に、賃主・借主から見たリース契約のメリット・デメリットを知ることで、自分のビジネスにどのような影響を与えるか、どんなリスクが伴うのかを、具体的に深めていきましょう。
リース契約のメリット
不動産におけるリース契約は、建設費用や不動産取得費用などの初期投資を、大幅に軽減することが可能です。この結果、各種手続きを減らしながら、自己投資と同じ効果を享受することができます。特に、大規模な投資が必要な新規事業や、成長期の事業にとって効果的な手法といえます。
また、建物、設備、内装等の仕様や立地について、借主の希望を反映できることは大きなメリットの1つです。借主のビジネスやブランドイメージに合わせたオーダーメイドの建物を選択することができ、自社のニーズに最適化された環境を確保することができます。
賃主側から見れば、不動産資産が収益物件として評価され、減損会計対応が適用される上、借地権の発生により相続対策も考慮されます。さらに、通常であれば更地返還が原則ですが、一時的な土地の有効活用により、土地の活用によって収益を得ることも、大きなメリットと言えましょう。
リース契約のデメリット
賃貸借契約と比較すると、リース契約の修正は極めて困難です。リース会社は多額の資金を投資し、借主の要望に応えた物件を建設し、賃貸料を徴収します。このため、借主にとっては、リース契約を見直すことは容易ではありません。
現在、国内外の情勢は悪化の一途を辿っており、コロナ禍における生活スタイルの変化や、ウクライナ危機に端を発した急激なインフレーションが発生し、店舗運営コストが急速に上昇しています。簡単ではなくとも、リース契約を見直すことができるなら、資金繰りの解決に向けて検討をすることが重要です。
まとめ
今回は、リース契約と賃貸借契約の違いについて詳細に解説し、リース契約の利点と欠点を明らかにしました。契約形態の理解は、より効果的なビジネス戦略を練るための鍵となります。
特にリース契約に関する知識は、
- 対象となる物件を把握
- 契約期間の長さ
- 修繕や、維持、保守などの管理責任
- 契約期間中の中途解約
といった点が重要です。
一度行ったリース契約の修正は確かに難しいと言えますが、借地料の減額やリース期間の延長、あるいはリース会社に対するコスト削減の提案など、見直せる可能性は十分にあります。詳しくは下記の記事で説明していますので、是非ご確認下さい。
これらの手段を用いてリース契約を適切に管理し、事業計画の見通しを立てていきましょう。