
リース会計システムと契約管理システムの違いとは?多店舗企業が選ぶべき仕組み
新リース会計対応を進めるなかで、Excel管理に限界を感じ始めると、次に検討するのがシステム化です。
しかし、いざシステムを探し始めると、次のような疑問が出てきます。
- 「リース会計システムを入れればよいのか」
- 「契約管理システムがあれば対応できるのか」
- 「契約書の保管と会計計算は、別々のシステムで管理してもよいのか」
- 「多店舗企業の場合、どのような仕組みを選ぶべきなのか」
新リース会計対応では、使用権資産やリース負債の計算、償還スケジュール、仕訳、注記といった会計処理が必要になります。一方で、その前提となる契約書の収集、契約期間・賃料・更新条項・覚書の管理も欠かせません。
つまり、リース会計システムだけでも、契約管理システムだけでも、不十分になる場合があります。
本記事では、リース会計システムと契約管理システムの違いを整理し、多店舗企業が新リース会計対応で選ぶべき仕組みについて解説します。
新リース会計対応では「契約」と「会計」の両方が必要になる
新リース会計基準では、借手の会計処理において、原資産を使用する権利に係る使用権資産と、リース料の支払義務に伴うリース負債を計上する考え方が重要になります。ASBJは2024年9月13日に企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等を公表しており、IFRS第16号やTopic 842と同様に、借手側で使用権資産とリース負債を計上する使用権モデルが説明されています。
このため、新リース会計対応では、単に契約書を保管するだけでは不十分です。
一方で、会計計算だけできればよいわけでもありません。
なぜなら、会計処理の元になる情報は、契約書や覚書、更新合意書、支払条件、解約条項などの中にあるからです。
たとえば、リース負債を計算するには、月額支払額、支払タイミング、リース期間、割引率などが必要です。
注記資料を作るには、将来支払額や短期・少額リースの区分、契約ごとの残存期間などが必要です。
契約変更が発生すれば、変更日、変更後賃料、残存期間、再測定の要否なども確認しなければなりません。
つまり、新リース会計対応では、
- 契約書を管理する仕組み
- 会計処理を行う仕組み
- その2つをつなぐ契約データ基盤
が必要になります。
リース会計システムとは
リース会計システムとは、主に新リース会計に必要な計算や仕訳、注記作成を支援するシステムです。
一般的には、以下のような機能を持ちます。
- リース負債の現在価値計算
- 使用権資産の計算
- 償還スケジュールの作成
- 利息と元本返済額の按分
- 減価償却費の計算
- 月次仕訳の作成
- 契約変更・解約時の再計算
- 長短振替
- 満期分析
- 注記資料の作成
- 会計システム向けCSV出力
リース会計システムの強みは、会計計算や仕訳処理にあります。
Excelで現在価値計算や償還スケジュールを作る場合、関数や計算式の管理が複雑になります。契約変更や解約が発生した場合は、どの時点から再計算するのか、どの仕訳を出すのかを個別に管理しなければなりません。
その点、リース会計システムを使えば、契約条件を入力することで、リース負債、使用権資産、月次仕訳、注記に必要な情報を効率的に作成できます。
ただし、リース会計システムには注意点もあります。
それは、入力元となる契約情報が正しく整備されていなければ、正しい計算結果は出せないということです。
- 契約書がどこにあるか分からない。
- 覚書が反映されていない。
- 最新の賃料が分からない。
- 契約期間とリース期間の判断根拠が残っていない。
- 店舗と契約の紐づきが分からない。
このような状態では、いくらリース会計システムを導入しても、前工程である契約情報の収集・整理に大きな手間がかかります。
契約管理システムとは
契約管理システムとは、契約書や契約情報を一元管理するためのシステムです。
一般的には、以下のような機能を持ちます。
- 契約書PDFの保管
- 契約情報の登録
- 契約更新期限の管理
- アラート通知
- 契約書検索
- 添付ファイル管理
- 契約変更履歴の管理
- 承認フロー
- 権限管理
- 監査ログ
契約管理システムの強みは、契約書の所在や更新期限、変更履歴を管理しやすい点です。
特に多店舗企業では、店舗ごとに複数の契約が存在します。
たとえば、
- 建物賃貸借契約
- 駐車場契約
- 倉庫契約
- 看板設置契約
- 設備利用契約
- 転貸契約
- 覚書
- 更新合意書
などです。
これらをフォルダやExcelだけで管理していると、どの契約がどの店舗に紐づくのか、どの契約が最新版なのか、どの覚書がどの条件を変更しているのかが分かりにくくなります。
契約管理システムを使えば、契約書や覚書を探しやすくなり、更新期限や変更履歴も管理しやすくなります。
ただし、契約管理システムにも注意点があります。
一般的な契約管理システムは、契約書の保管や期限管理には強い一方で、新リース会計に必要なPV計算、償還スケジュール、仕訳、注記資料の作成までは対応していないことがあります。
つまり、契約書は管理できても、その情報を会計処理に使える形に変換できなければ、結局は別途Excelやリース会計システムへ入力し直す必要が出てきます。
リース会計システムと契約管理システムの違い
両者の違いを整理すると、以下のようになります。
比較項目 | リース会計システム | 契約管理システム |
|---|---|---|
主な目的 | リース会計の計算・仕訳・注記対応 | 契約書・契約情報の管理 |
得意領域 | PV計算、償還スケジュール、仕訳、注記 | 契約書保管、更新管理、検索、変更履歴 |
契約書PDFの管理 | 製品による | 得意 |
店舗・物件との紐づけ | 製品による | 製品による |
契約更新アラート | 弱い場合がある | 得意 |
契約変更履歴 | 会計計算上の変更管理が中心 | 契約書・覚書の履歴管理が中心 |
PV計算 | 得意 | 一般的には対象外 |
月次仕訳 | 得意 | 一般的には対象外 |
注記資料 | 得意 | 一般的には対象外 |
監査証跡 | 製品による | 得意な製品が多い |
多店舗契約管理 | 製品による | 製品による |
このように、リース会計システムと契約管理システムは、役割が異なります。
リース会計システムは、会計処理の後工程に強い。
契約管理システムは、契約情報の前工程に強い。
問題は、この2つが分断されると、新リース会計対応の実務が非効率になりやすいことです。
どちらか一方だけでは足りないケース
● リース会計システムだけの場合
リース会計システムだけを導入した場合、会計計算は効率化できるかもしれません。
しかし、計算に必要な契約情報を別途集める必要があります。
たとえば、以下のような作業が残ります。
- 契約書を各部署から集める
- 店舗ごとの契約を洗い出す
- 覚書や更新合意書を確認する
- 最新の賃料を確認する
- 契約期間とリース期間を判断する
- 契約変更履歴を確認する
- 入力用のExcelやCSVに加工する
この前工程が整っていないと、リース会計システムに正しいデータを入れるまでに多くの時間がかかります。
また、契約変更が発生した際に、契約管理側の情報とリース会計側の計算結果がズレるリスクもあります。
● 契約管理システムだけの場合
契約管理システムだけを導入した場合、契約書の保管や更新管理は効率化できます。
しかし、新リース会計対応に必要な会計処理は別途行う必要があります。
たとえば、
- リース負債の現在価値計算
- 使用権資産の計算
- 償還スケジュールの作成
- 利息と元本の按分
- 減価償却費の計算
- 月次仕訳
- 契約変更時の再測定
- 解約時の仕訳
- 満期分析
- 短期・少額リース注記
などです。
契約書はシステムで管理できていても、会計処理のためにExcelへ再入力する状態では、二重管理になってしまいます。
● 両方を別々に導入した場合
リース会計システムと契約管理システムを別々に導入する方法もあります。
ただし、この場合は、2つのシステム間でどのようにデータを連携するかが重要です。
契約管理システムには契約書がある。
リース会計システムには会計計算用のデータがある。
しかし、両者がつながっていない。
この状態では、次のような問題が起こりやすくなります。
- 契約管理側では賃料が更新されているのに、会計側には反映されていない
- 会計側のリース期間の判断根拠が、契約管理側で探しにくい
- 覚書の内容が、償還スケジュールに反映されているか確認しづらい
- 店舗単位で契約と会計影響を一覧できない
- 監査対応時に、契約書と会計処理の根拠を突合する手間がかかる
別々のシステムを使うこと自体が悪いわけではありません。
ただし、データ連携や運用ルールを設計しないまま導入すると、システムが増えたにもかかわらず、確認作業や二重入力が残る可能性があります。
多店舗企業では、なぜ分断が問題になりやすいのか
多店舗企業では、契約管理と会計処理が分断されるリスクが特に大きくなります。
理由は、契約の数と種類が多く、関係部署も多いためです。
たとえば、店舗開発部門が出店時の契約情報を持ち、総務部門が契約書PDFを保管し、法務部門が条項確認を行い、経理部門が会計処理を行うという運用は珍しくありません。
このとき、各部署が別々のExcelやフォルダで情報を管理していると、新リース会計対応に必要な情報が分散します。
特に多店舗企業で問題になりやすいのは、以下のような点です。
課題 | 発生しやすい問題 |
|---|---|
店舗ごとに契約が複数ある | どの契約がどの店舗に関係するか分からない |
覚書が多い | 最新の賃料・契約期間が分からない |
自動更新が多い | リース期間や更新見込みの判断が難しい |
契約書の形式がバラバラ | 必要項目の抽出に時間がかかる |
担当部署が分かれる | 経理だけでは情報を集めきれない |
契約変更が多い | 会計側の再計算・再測定に漏れが出やすい |
監査対応が必要 | 判断根拠や変更履歴の提示に時間がかかる |
新リース会計対応では、契約情報と会計処理がつながっていることが重要です。
店舗契約の現場情報が、会計処理に使えるデータとして整っていなければ、経理部門が後からExcelで再加工することになります。
必要なのは「契約管理」と「会計処理」をつなぐ仕組み
新リース会計対応で本当に必要なのは、リース会計システムか契約管理システムか、という二択ではありません。
重要なのは、契約管理と会計処理をつなぐ仕組みです。
具体的には、以下のような流れを一貫して管理できることが理想です。
- 契約書・覚書を収集する
- 契約情報をデータ化する
- 店舗・物件と契約を紐づける
- 契約期間・支払条件・更新条項を整理する
- 会計処理に必要な項目を整備する
- PV計算・償還スケジュールを作成する
- 月次仕訳を作成する
- 契約変更・減損・解約に対応する
- 注記・決算レポートに活用する
- 監査対応に必要な根拠・履歴を確認する
この流れが分断されていると、各工程でExcel加工や手作業の確認が発生します。
逆に、契約情報が最初から会計に使えるデータとして整っていれば、後続の計算・仕訳・注記対応がスムーズになります。
Pro-Signでできること
Pro-Signは、店舗・物件・契約情報を一元管理し、その情報を新リース会計対応に活用するための仕組みです。
単なる契約書保管システムでも、会計計算だけのシステムでもなく、契約管理と会計処理をつなぐ基盤として活用できます。
● 1. 物件・店舗と契約を紐づけて管理できる
Pro-Signでは、「物件」と「契約書」を分けて管理し、それぞれを紐づける考え方を採用しています。これにより、1つの店舗に複数の契約が存在する場合でも、店舗単位で契約情報を整理しやすくなります。
多店舗企業では、建物賃貸借契約だけでなく、駐車場、倉庫、看板、設備、転貸など、店舗に関連する契約が複数存在することがあります。
店舗と契約が紐づいていれば、経理部門が新リース会計対応で契約を確認する際も、「どの店舗に関する契約か」を追いやすくなります。
● 2. AIを活用して契約書情報のデータ化を支援できる
Pro-Signでは、契約書PDFをアップロードし、AIで契約内容を読み取ることで、契約情報の登録作業を効率化できます。読み取り結果は、原本PDFと見比べながら修正・補正できるため、AIで抽出した内容をそのまま使うのではなく、人による確認を挟んで登録できます。
さらに、既存契約に対して覚書などで内容が変わった場合、AIで読み取ったデータを既存契約に紐づけ、上書き更新またはバージョン追加する運用も可能です。
これにより、契約書の読解・入力作業を効率化しながら、新リース会計に使える契約データを整備しやすくなります。
● 3. 契約変更をバージョンとして残せる
新リース会計対応では、契約変更の履歴管理が重要です。
賃料改定や契約期間延長などが発生した場合、単に現在の契約条件を上書きするだけでは、過去の条件や変更時点が分からなくなります。
Pro-Signでは、覚書等で賃料や期間などの条件変更があった場合、「バージョンを追加」して契約の変遷を管理できます。変更したバージョンの履歴も確認でき、条件変更時には固定賃料推移や変動賃料推移のエリアで改定前後の差分を確認できる設計です。
これは、契約変更が会計処理に影響する新リース会計対応において、重要なポイントです。
● 4. 新リース会計エンジンで会計処理につなげられる
Pro-Signの新リース会計エンジンでは、契約マスタ、PV計算、償還スケジュール自動生成を前提に、仕訳パターンビルダー、契約変更・減損・解約などのイレギュラー処理、インボイス制度対応、短期・少額リース注記、満期分析レポート、長短振替仕訳、免除リース費用集計レポートなどが整理されています。
つまり、契約情報を管理するだけでなく、その情報を会計処理に使える形へつなげることができます。
これは、一般的な契約管理システムだけでは対応しにくい領域です。
● 5. 決算・注記対応にも活用できる
新リース会計対応では、月次仕訳だけでなく、決算時の注記資料作成も重要です。
Pro-Signの新リース会計エンジンでは、満期分析レポート、長短振替仕訳、短期・少額リース注記、免除リース費用集計レポートなどが機能として整理されています。
短期リース・少額リースとして分類された契約について、期間内支払額を集計し、決算注記用のレポートを出力する設計も含まれています。
契約データが整っていれば、決算時に改めてExcelで集計し直す負担を減らしやすくなります。
多店舗企業が選ぶべき仕組み
多店舗企業が新リース会計対応システムを選ぶ際は、単に「リース会計システムか、契約管理システムか」で考えるのではなく、次の観点で確認することが重要です。
● 1. 契約書を管理できるか
まず、原契約、覚書、更新合意書、図面、関連資料を紐づけて管理できるかを確認します。
契約書の所在が分からない状態では、会計処理の根拠確認に時間がかかります。
● 2. 店舗・物件と契約を紐づけられるか
多店舗企業では、契約単体ではなく、店舗や物件を起点に契約を見られることが重要です。
1店舗に複数契約がある場合でも、店舗単位で契約を確認できる仕組みが望ましいでしょう。
● 3. 契約変更や覚書を履歴として残せるか
賃料改定や期間延長が発生した場合、最新情報だけでなく、過去から現在までの変遷を追えることが重要です。
契約変更が会計処理に影響する場合、変更履歴が残っていなければ、後から判断根拠を確認するのが難しくなります。
● 4. 会計計算に使える項目を持てるか
契約書を保管するだけでは、新リース会計対応には不十分です。
リース期間、月額支払額、支払タイミング、資産区分、免除区分、税区分、取引先情報など、会計処理に必要な項目を管理できるかを確認する必要があります。
● 5. PV計算・仕訳・注記に接続できるか
契約データを整備した後、それをPV計算、償還スケジュール、仕訳、注記、決算レポートに活用できるかを確認しましょう。
契約管理と会計処理が分断されていると、結局はExcelで再加工することになります。
● 6. 監査対応に必要な証跡を残せるか
新リース会計対応では、会計処理の結果だけでなく、判断根拠や変更履歴も重要です。
誰が確認したのか、いつ変更したのか、どの契約書を根拠にしたのかを追える仕組みがあると、監査対応や内部統制にも役立ちます。
まとめ
リース会計システムと契約管理システムは、それぞれ役割が異なります。
リース会計システムは、PV計算、償還スケジュール、仕訳、注記といった会計処理に強いシステムです。一方、契約管理システムは、契約書の保管、更新期限、変更履歴、ファイル管理、権限管理などに強いシステムです。
新リース会計対応では、どちらか一方だけでは不十分になる場合があります。特に多店舗企業では、契約書が店舗ごとに分散し、覚書や契約変更も多く、関係部署も複数にまたがります。そのため、契約管理と会計処理が分断されていると、二重入力、確認漏れ、計算ミス、注記集計の手戻りが発生しやすくなります。
重要なのは、契約書を保管することでも、会計計算だけを行うことでもありません。契約情報を、会計に使えるデータとして整備し、PV計算・仕訳・注記・決算レポートまでつなげることです。
多店舗企業が新リース会計対応を進める際は、リース会計システムと契約管理システムを別々に考えるのではなく、契約管理と会計処理をつなぐ仕組みがあるかを確認することが重要です。


