システム導入における費用対効果とは?考えるべき「費用」と「効果」について徹底解説します!
「あの寿司屋のランチはコスパがいいよ。夜はちょっと高いけど、ランチには夜と同じネタを使っているらしくて、とても美味しいし、その上、注文するとすぐに出てくるタイパの良さもうれしいね」というように、よく使われる「コスパ」と「タイパ」。
Cost Performance、Time Performanceを略した和製英語ですが、日本語に訳すと「費用対効果」「時間対効果」となります。
でも、「費用対効果の高い寿司」とは言わないところがおもしろいですよね。
このコラムでは、費用対効果の定義や種類、表現についてお話しさせていただきます。
もちろん寿司の話ではありません。システム導入に関する費用対効果の話です。
目次[非表示]
- 1.費用対効果が語られるビジネスシーン
- 2.システム導入における「効果」
- 2.1.数値として表せる定量的効果
- 2.2.数値で表せない定性的効果
- 2.3.効果は他にも有る
- 3.システム導入における「費用」
- 4.まとめ
費用対効果が語られるビジネスシーン
寿司を例にして、「コスパ」と「費用対効果」では言葉の持つニュアンが少し違うことを表してみましたが、費用対効果という表現は、ビジネスシーンで、より厳密さを求める時に使われることが多いようです。
また、「タイパ」と表現される時間対効果については、作業時間をコストと考えると費用対効果の一部と考えていいかもしれません。
ビジネスにおいて、システム導入の費用対効果を検討する時には、効果として「定量的効果」と「定性的効果」への着目が一般的です。
紙ベースやExcelベースの店舗情報管理方式に見切りをつけ、システム化のための導入候補リストを基に費用対効果を比較しているご担当者様は、まず、導入費用/運用費用を比較し、次に定量的効果を比較し、その優劣を確認後、定性的効果を比較するという順序だと思います。
また、上層部/意志決定者のかたにシステム導入の申請を行おうとしているご担当者様は、「費用と累積効果の比較」の数式を複数年で表現することで、その妥当性を確認し、副次的に定性的効果を申請の中に盛り込むケースが多いと思われます。
そして、システム導入の意思決定者の皆様は、提示されたシステム導入案を、定量的な「損益」という観点で判断されることはもちろんのこと、会社の発展や未来の展望、そして社会貢献までを含めた定性的効果を「資産」として評価されるのではないでしょうか。
「店舗に関する情報をもっと潤沢に蓄積して、適切なタイミングで利用できればなあ」と考えておられる関係部門の方もいらっしゃるはずですし、「本来、店舗情報は本社で集中管理しているはずなのに、どうして私がやらないといけないのか」とネガティブな感覚をお持ちの店舗担当者もいらっしゃるかもしれません。
このコラムは、当社が提供するPro-Sign賃貸借契約管理システムのようなSaaS形式の店舗情報管理システムや、オンプレミス形式で開発するシステムの導入を例として使いながら、どのように費用対効果を表現すればいいのかを皆様が検討される際に役に立つ情報の提供を目指しています。
※実際の稟議に際しては、下記のコラムも併せてチェックしてみてください。
システム導入における「効果」
システム導入においては、その導入がもたらす「効果」と「費用」の比較から、検討を行うことが一般的です。ここではまず、費用対効果の「効果」について考えてみたいと思います。
数値として表せる定量的効果
定量的効果は「数値として効果の量や割合を表すことができる効果」を指します。
具体的には以下のものが対象となります。
ただし、場合によっては、単独システムでの効果だけではなく、他システムの効果との組み合わせや、業務プロセスの改善などを含む複合要素も加味する必要があります。
1 |
売り上げ増加 |
売り上げ全体の増加、顧客あたりの売り上げの増加 |
2 |
新規顧客獲得数 |
特に営業/販促系システムの場合の効果 |
3 |
コスト削減 |
直接経費の削減 |
4 |
作業時間削減 |
業務時間、残業時間の削減や短縮 |
5 |
ミス率の低減 |
業務におけるミスの数の低減 |
6 |
不良率低減 |
(特に生産現場における)生産効率の改善 |
7 |
質問対応 時間短縮 |
・社内での部門間の問い合わせへの対応時間の短縮 |
8 |
リードタイム 短縮 |
納品、生産、調達等のリードタイムの短縮 |
9 |
クレーム件数 削減 |
外部からのクレーム数の削減 |
10 |
人員削減 |
要員数の削減 |
例えば弊社で提供しているPro-Signの場合は、主に定量的効果を訴求していますが、上表でいうと「4.作業時間削減」、「5. ミス率の低減」、「7.質問対応時間短縮」、「9.クレーム件数削減」あたりが該当します。
定量的効果の場合は、その効果を時間給換算する等、数値で表しやすいと思います。
※定量的効果の詳細については、下記資料からご確認下さい。
数値で表せない定性的効果
定性的効果は「主観的な意見や評価をもとにした質的な効果」を意味します。
1 |
顧客満足度向上 |
顧客へのアンケートや聞き取り調査をもとにした評価 |
2 |
従業員満足度向上 |
従業員へのアンケートや聞き取り調査をもとにした評価 |
3 |
ブランドイメージの向上 |
不特定多数の対象へのアンケート調査や聞き取り調査をもとにした評価 |
4 |
業務の継続性の向上 |
(特定の社員に業務や技術が偏らず) 不測の事態における業務継続性の確保 |
5 |
ビジネスパートナーとの 信頼関係の強化 |
BtoBにおけるアライアンスパートナーや サプライチェーンのパートナーとの協力関係 |
6 |
イノベーションの促進 |
デジタル化による新たなビジネスやプロセスの開発 |
7 |
人材の有効活用 |
人材の流動性確保、要員配置のフレキシビリティの向上 |
8 |
業務サポートの充実 |
業務の効率化/高度化支援 |
9 |
情報の利活用の活発化 |
システムに蓄積された情報の多方面への利用 |
10 |
意思決定のスピードアップ |
意思決定を行うために必要な情報の提供 |
11 |
ワークスタイルの変化への対応 |
フレキシブルタイム制、在宅勤務、長期休暇制度など への対応(いわゆる働き方改革のサポート) |
Pro-Signでは前述のように定量的効果を主と考えていますが、定性的効果においても上表の「4. 業務の継続性の向上」、「5.ビジネスパートナーとの信頼関係の強化」、「7.人材の有効活用」、「8. 業務サポートの充実」、「9.情報の利活用の活発化」、「10.意思決定のスピードアップ」、「11.ワークスタイルの変化への対応」等の効果が期待できます。
定性的効果については明確に数値で表せるものではありませんが、実際に効果が出た場合と出なかった場合とでのビジネスに与える影響を、副次的なプラス要素としてとらえる、もしくはざっくりとでも数値に置き換えてみるというのが良いかと思います。
※定性的効果については、下記のコラムも併せてチェックしてみてください。
効果は他にも有る
ここまで、定量的効果と定性的効果に焦点をあてましたが、それら以外にも、SDGs、ESGやその下位概念としてのGXに関連する効果が認められる場合があるかもしれません。
また、CSRやコーポレートガバナンスに対する効果という考え方も見逃せないポイントです。
なお、これらは、企業の社会的責任の観点ですが、企業自身としては、DXへの効果も将来の成長に向けての評価ポイントになります。
これらについては、業種や導入するシステムの対象等に影響されますので、システム導入と直接結びつくことは少ないかもしれませんが、何らかの関係が想定できるのであれば、定量的効果/定性的効果の議論の枠外にでも表現できることになりますし、経営の視点からは重要視すべきポイントとなります。
システム導入における「費用」
ここで、「費用対効果」の「費用」の部分の留意点を列挙します。
システム導入の際の費用は、次のように「導入準備」「システム開発/導入」「運用準備」「運用」の4つに分けて考えることができます。
下表はそれらの費用がSaaS形式とオンプレミス形式に必要かどうかを表しています。
フェーズ |
項目 |
SaaS形式 |
オンプレミス形式 |
導入/開発準備 |
要件定義費 |
△ |
〇 |
現行の契約関連資料の整備費 |
〇 |
〇 |
|
導入/システム開発 |
システム開発費 |
〇 |
|
運用準備 |
運用環境準備費 |
〇 |
〇 |
ハードウェア費 |
〇 |
||
ソフトウェアライセンス費 |
〇 |
||
システム利用契約初期費用 |
〇 |
||
初期データ移行費 |
〇 |
〇 |
|
利用者教育費 |
〇 |
〇 |
|
運用 |
ハードウェア保守費 |
〇 |
|
ソフトウェア保守費 |
〇 |
||
システム機能変更費 |
〇 |
||
月額使用料 |
〇 |
SaaS形式とオンプレミス形式では関係する費目が違ってきますので、注意が必要です(店舗情報管理システムをオンプレミス形式で開発する場合は数千万円レベルのコストがかかる場合がありますので、費用対効果は出にくくなります)。
上記以外に、セキュリティ対策費、サーバールーム費、ネットワーク費等が考えられますが、他のシステムと共用である場合が多いので割愛しています。社員であれ外注であれ、人間の力が必要な場合もそれを費用として考えています。
その際、標準時間単価を決めておくとどんな場合にも適用できるので合理的です。
まとめ
費用対効果について、いろいろな角度からの分析を試みました。
企業の状況や歴史によって、また、意思決定者の関心のあるポイントによって、実務担当者様の現状によって、どんな費用対効果が求められているのかは違うかもしれませんが、費用対効果が出ないシステム導入があり得ないことは確かです。
このコラムに記載した情報を組み合わせていただき、貴社に最適な費用対効果の表現を見つけていただきたいと思います。
前章でもお伝えいたしましたが、自社独自のシステムをオンプレミス形式で構築するには大きな費用がかかるため、投資額を回収するまでに時間がかかりすぎるというリスクがあります。
当社が提供するPro-Sign賃貸借契約管理システムは、そのリスクの心配をせずに総合的に店舗情報を管理できるシステムとして、定量的効果と定性的効果の両面に優れておりますので、「費用対効果」を実務者としても、管理者としても実感していただけます。
また、店舗情報を利用される関係部門の方も、情報の利活用によるイノベーションのアイデアを議論していただけるはずですので、そのための先行投資という考え方も可能でしょう。そして、それらのステークホルダーの「費用対効果」への意識こそが、システム導入の意思決定者の皆様が望まれていることではないでしょうか。